深遠の愛

□3.温度
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 狛村の元に射場から奇妙な話が舞い込んできたのは、見合いの話から三日後の事だった。

 午後の勤務中、隊首室で書類を片付けていると射場が首を捻りながら隊首室に入ってくる。その様子が気になって「何かあったのか?」と聞けば、射場は眉根を寄せて口を開いた。

「ワシにも詳しい事は分からんのですが、青瀬が問題を起したとかで・・」
「青瀬が?何をしたのだ。」
「それが五番隊二人と、まぁ、早い話が喧嘩したらしいんで。」
「喧嘩?」
「しかもその相手の一人が席官で。・・その、墨田香織なんです。」
「・・・・。」

 青瀬も墨田も自分の知っている人間だ。しかも墨田との見合いは一週間後に迫っている。そんな時に、問題が起こるなんて偶然だろうか。

「どうやら青瀬が、全面的に自分が悪いと認めちょるそうで、お互い大した怪我もしてないし、今回はそれぞれの隊に処分を一任するってぇ話でした。」
「そうか・・。」

 狛村は青瀬はと特別親しい訳ではない。けれど理由もなく私闘をするような人間には見えなかった。

「それで、理由は?」
「いや、それが・・。五番隊の二人は突然青瀬が手を出してきて、理由は分からんと言っちょるんですわ。当の青瀬は言えないの一点張りで。」

 喧嘩など日常茶飯事の十一番隊の中にいるのだから、それ程周りも青瀬の行動を重く捉えてはいないという。本人が素直に非を認め、直接五番隊へ謝罪に行った事もあって、事態はすぐに収拾したらしい。

(青瀬が喧嘩か・・・)

 その事が引っかかったが、気にした所で自分に出来る事は何もない。
 狛村は頭を切り替え、通常業務へと戻っていった。
 
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