深遠の絆

□1.愛人疑惑
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「そういやぁ、最近お前にちょっかい出してくる奴がいなくなったな。」

 隊舎での食事中、席官になったのが大きいのかもな、と斑目三席が一人で頷いている。

 確かに十一番隊に配属されたばかりの頃は冷やかしや好奇の目を向けられ、外を歩けば色々言ってくる人も多かった。だが、それも最近ではなくなりつつある。
 私は食べていた沢庵を飲み込むと、事も無げに言った。

「やっぱり更木隊長の愛人に手は出せないってことなんじゃないですか?」

 斑目三席は飲んでいたお茶を噴出す。更木隊長はピクリと箸を持った手を止める。周りの隊員達は、驚愕に目を見開いて口をぽかんと開けた。
 私と綾瀬川五席だけが平然と食事を続けている様はおかしな光景だった。

「あ・・、愛人・・・?」

 ポツリ、と斑目三席が呟くと、皆が一斉に更木隊長に視線を向ける。隊長は機嫌悪そうに皆を一瞥すると、その睨みに隊員達は顔を青くして愛想笑いをしたり、目を逸らして誤魔化した。そのまま、隊長は説明を求めるように私を見る。

「青瀬・・。」
「巷ではそういう噂が流れてるんですよ。」

 私が笑って白状すると、皆緊張が解けたのか肩の力が抜ける。「あぁ?」と言って、斑目三席は眉根を寄せた。
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