深遠の絆

□2.容疑者
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 三番隊へ書類を届けた帰り、修練の時間まで時間があるのでゆっくりと歩いていると、二・三人の死覇装を着た男達が自分を見ているのが目に入る。何だろう、と思いながらその場を通り過ぎようとすると、その内の一人が声をかけてきた。死覇装には十二番隊の隊証が付いている。

「よぉ。お前が青瀬か。」
「・・そうですけど。」

 ニヤニヤした笑いを顔に貼り付け、その男は私の前に立った。

「やるじゃん。あの更木隊長の愛人に納まるなんてさ。随分いい思いしてんだろ?」

 最近の噂を彼らも鵜呑みにしているらしい。誰にどう思われても問題はないのだが、ワザワザ声をかけてくるとはどういうつもりなのだろう。

(アホらし。)

 無視して行こうとするが、男は道を塞いで邪魔をする。睨みつけると彼は顔色を変えた。

「おいおい。俺は十二番隊の十席だぜ。敵うと思ってんのかよ。」
「それはやってみなければ分からないでしょう?」
「ちっ。これだから十一番隊は嫌なんだよ。」
「どういう意味?」
「頭の悪いサルの集まりのくせに。」

 かっと頭の中が熱くなり、斬魄刀の柄に手がかかる。だが、同時にどこかで冷静な意思が働いた。その証拠に一瞬で抜刀された斬魄刀は彼の鼻先でぴたりと止まる。後数センチ深ければ、彼の鼻は二つになっていたかもしれない。
 一方、名前も知らない十席は目を見開いて固まっていた。あまりの速さに目で追う事も出来なかったようだ。ゆっくりと冷や汗が彼の頬を流れる。
 刀を引くと、緊張の糸が切れたようでその場にヘナヘナと座り込んだ。
 私は刀を鞘に戻して、男には一瞥もくれずに歩き出す。

 まさかこれが、後々問題になるとは思わずに。
 
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