そして、光へ
□8.告げる命
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目が覚めてから丸一日検査を受けて、やっと狛村が自宅に帰って来たのはつい二時間前のこと。
そして現在、狛村は何故かピシッと正座をした姿勢で独り、居間の座布団の上に座っている。
さっきまで一緒に夕食をとっていた織はここにはいない。食べ終えて食器を片付けた後ここで待っているように言われ、狛村はその言葉通り彼女が戻って来るのを待っているのだ。
何故正座なのかと言えば、
「左陣様。お話したいことがあります。ちょっと待っていて下さい。」
そう言った時の彼女の目がやけに真剣で、無意識の内に緊張にみまわれ正座しているという訳だ。要は親の説教を待つ悪ガキの気分なのである。
正直、狛村には一体彼女が何を話そうとしているのか検討もつかない。先日の虚との戦いで傷付き、一週間も目が覚めぬ状態だったことを聞かされた時は驚くと同時に彼女に心配をかけてしまったと後悔もした。
もしや自分は愛想を尽かされてしまったのだろうか?ならば席を外している彼女がこの間に用意しているのは離婚届?
「はぁ…。」
無意識の内に溜め息が出る。どうも一人でいると悪い方にばかり考えが傾いてしまう。織に早く帰ってきて欲しいが、来て欲しくない気もする。
なんとも言えない複雑な気分を味わっている所で静かに廊下へ続く襖が開いた。
緊張がピークに達した所で現れた織が持っていたのは離婚届ではなく温かな湯気を立てている湯のみを載せた盆。それを見た狛村は、今度は長い息を吐き出した。
「茶・・・。」
「はい。お待たせしました。」