君のいる夏

□あなたの名前
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 その日、部活に入っていない瑞希は真っ直ぐ家路についていた。夕方だけれど陽は高く、段々と夏が近づいていることを実感させる。

 いつも一緒に下校しているチャドは今日一緒じゃなかった。委員会で遅くなるから先に帰っていて欲しいとメールがあったのだ。待とうかと思ったけれど今日は随分遅くなるらしいので止めた。待てば喜んでくれただろうけど、同時に彼はそれを悪かったとも思いそうだから。

(重い女だと思われたくないし・・・)

 色々考えた結果瑞希は彼の言葉に甘えることにした。

 瑞希にとってチャドは初めての彼氏だ。だからこんな時どうするべきなのか困ってしまう。雑誌に書いてあるような駆け引きなんて自分には向かないし、出来る気もしない。正しい答えなんか分からない手探りの恋。難しいけれど楽しい毎日。それが最近の瑞希の日常だった。

(委員会が終わった頃にメール送ろうかな。お疲れ様、とか。後は・・・)

 カチカチとメールを打ちながら歩く。携帯画面を見ている瑞希は気付かなかった。背後から足音を殺して近づく男の影に。
 
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