君のいる夏

□あなたの背中
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 夏休みが始まって10日。先日の言葉通り、瑞希は一度もチャドに会っていなかった。それを誤魔化すように学校の友人達との予定でカレンダーを埋めていく。けれどそれでも空白の日は出来てしまうもので、そんな日は部屋の掃除をしても、料理を作っていても頭に浮かぶのはチャドのことばかり。

(今頃、何してるのかな・・・・。)

 考えたって答えの出る問題じゃない。だって何も知らないのだから。チャドが話してくれた助けたい仲間とは誰なのか、その為に彼は何をしに、どこへ行こうとしているのか。
 瑞希の口から深い溜息が吐き出される。

(買い物にでも行こう・・・。)

 シャワーで汗を流して着替えると、瑞希は近くの商店街へと向かった。




(あ、珍しい。)

 瑞希の目の前、塀の上を身軽な動きで真っ黒な猫が歩いている。黒猫は不幸の前触れなんて言うけれど、その姿は可愛いし、神秘的な感じがして好きだった。
 ついつい目で追ってしまい、自分が向かっている方向とは違う角を曲がった猫を見て一瞬迷う。

(ま、時間があるし、たまにはいっか。)

 なんとなく楽しい気分になってきて、黒猫を追っかけて自分もその角を曲がる。こんな風に後先考えずに道を歩くのも良い。
 この先はどこだろう。公園?空き地?それとも魚屋?もしかしたら黒猫が餌を貰っている家があるのかもしれない。
 気付かれて逃げられないように距離をとって歩いていると、また黒猫が角を曲がった。そっと顔だけ出して道の先を覗いてみる。

(あ・・・。)

 住宅街が続く、何もない路地。黒猫が足を止めたのはそこに立っていた一人の女性の足元。パッチリした瞳、抜群のスタイル。真っ直ぐで長い茶色の髪を花モチーフのピンで留めている、瑞希のよく知っている女の子。

(あの子だ。)
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