君のいる夏

□君との夜
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 彼が現れたのは突然だった。



 夏休みも8月に入り、先週まで実家に帰っていた瑞希は昼から再び空座町のアパートに戻ってきていた。
 溜まった郵便物を仕分け、チラシはまとめてゴミ箱へ捨てる。全部の窓を開けて換気しながら部屋を掃除した。流石に夏真っ盛り。小さなアパートの部屋でも一通り掃除すれば汗が流れる。
 掃除を終えて窓を閉め、エアコンのスイッチを入れる。汗の滲んだTシャツを脱いで洗濯機に入れ、シャワーを浴びた。

「さっぱりしたー・・、ん?」

 風呂から上がって濡れた髪を拭いていると、ベッドの上においていた携帯の着信ランプが光っていた。二つ折りのそれを開ける。するとディスプレイには電話の着信とメールの両方のマークが表示されていた。先に着信履歴を確認すれば、そこには茶渡泰虎の文字。

(泰虎!!)

 慌ててメールを開けば、それもチャドからだった。そこにはあったのは彼らしい絵文字のない一文。

『これから行ってもいいか?』

「これから!!?」

 メールが来ているのは5分前。いいよ、と返事をすれば30分もしない内に彼は来てしまうだろう。幸い部屋は掃除したばかりだが、久しぶりのチャドとの時間。服をどうしようか考えるだけでもパニックになりそうだ。
 震えそうになる手で何とか一時間後に来て、と返事を返して、瑞希はバタバタと準備を始めた。
 
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