君のいる夏
□あなたの欠片
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女物の着物がひらりと舞う。纏っているのは髭の生えた体格の良い男なのに、何故かしっくりとくる。
だがそんなことを暢気に考えている場合ではない。何度突き出してもひらりひらりとかわされているのは自分の拳なのだ。
チャドの心に焦りが生まれる。
「君のは明らかに後者だよ。」
そんなのはどうでもいい。削られているのが自分の霊圧だろうが命だろうが、目的の為にこの力が必要なのだ。ルキアのために、一護のために、仲間達のために必要ならば何度だってチャドはこの力を使うだろう。
京楽と名乗った男の腕が目に映らないほどの速さで振られる。同時に散ったのは桜の花びらではなく赤い鮮血。
隊長とはこんなにも遠いのか。
横一文字に斬られた傷が熱い。遠のく意識。頭を横切る仲間達の顔。
そして――
(瑞希・・・・)
帰らなくては。彼女の所へ。待っていて欲しいと願ったのは自分。ならば彼女の元へ帰るのは自分の責務。
帰って彼女の顔を見て、あの小さな体を抱きしめよう。そして今度こそ一緒に夏の思い出を作ろう。
倒れると共にチャドは意識を失った。
最後に脳裏に浮かんだのは、いってらっしゃい、と言ってくれた彼女の笑顔。