君のいる夏
□君の笑顔
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最初に目に入ったのは白い天井。意識が浮上したばかりで頭が働かないチャドはしばらくそれを眺めていた。数分して自分がどこに居て何をしていたのか思い出す。
(・・・生きてるのか。)
腕を持ち上げ目の前にかざすと、そこを覆っていた装甲はなくなり、普段の自分の腕に戻っている。京楽という男に斬られた胸の傷に触れれば、そこにはきつく包帯が巻かれていた。
(手当て?何故・・)
やっと体を起せば、自分が横になっていたのは真っ白なシーツが掛かったベッドの上。服も自分のものではない、簡易な着物を身に着けている。
負けて強制的に現世に戻され、病院に運ばれたのかと思った。けれどそうじゃない。病院に見えるがここは牢だ。その証拠に本来ドアが取り付けられている壁は鉄格子になっていた。
(捕まったのか・・・。)
あの場で止めを刺されなかっただけ行幸だろう。そう言えば、掠れる意識の中で聞こえた京楽と七緒の言葉。あれは何を意味しているのか・・・。
(隊長が一人、死んだと言っていたな。)
不法なルートで精霊邸に侵入した自分達は当然疑われるだろう。その為に殺さず捕えられたに違いない。だが、このままではルキアを助けることは出来ない。一護はどうしただろう。石田や織姫達は――
その時、不意にもう一人の顔が思い浮かぶ。途切れる意識の中で見た、愛しい恋人の笑顔。
(瑞希。)
自分が斬られ、牢屋に捕まっていると知ったらきっと心配するだろう。顔が見たい。声が聞きたい。けれどそれは全てが終わってからだ。
(瑞希・・・)
「瑞希って誰だ?」