君のいる夏

□君の隣に
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 まぶしい朝日が照らす登校風景。挨拶を交わす生徒達は皆笑顔で夏休みの思い出を語っている。久しぶりとか、焼けたね、とかそんな声が飛び交う中、瑞希は勢いよく背中を叩かれた。

「おっはよー!!元気だった!?」
「あ、おはよう、千鶴ちゃん。」

 瑞希に下の名前で呼ばれ、千鶴はでれっとした笑顔を見せる。そして改めて彼女の表情を確認してうんうんと頷いた。

「良かった。」
「え?」
「夏休み前よりいい顔してる。なんかいい事あった?」
「えっ、・・あ・・・・。」

 顔を真っ赤にする彼女を見た千鶴はその原因に思い当たったのか、笑みを消した。

「あー。成る程、あいつか。」
「ち、千鶴ちゃん・・。」
「ハイハイ。みなまで言わなくていいよ。ま、なんであろうと元気が出たなら良かったわ。」
「ありがとう。」
「ん。じゃ、私は先行くねー!」
「うん。」

 瑞希は見慣れた花屋の看板前で足を止めた。そこは自分とチャドの通学路が重なる十字路。角を曲がれば大きな背の男子高校生が立っている。

「おはよう。泰虎。」
「おはよう。」

 優しい目が自分を見下ろしている。互いに笑みを交わすと、二人は並んで歩き始めた。
 
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