番外編

□旧本部での生活
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私の名前はペトラ・ラル。
今回特別対策班、通称リヴァイ班に任命され現在調査兵団旧本部で生活している。

特別対策班のメンバーはリヴァイ兵長が直々に指名したという。調査兵団の兵士としてこれほど光栄なことはない。

ずっと隣で付き従いたいと思っていたリヴァイ兵長の元で働けるのだから。

「思っていた」というのは言葉の通りで、もう過去の話だったりする。

もちろんリヴァイ兵長のことを嫌いになったわけでも、隣に立ちたくないと思ったわけでもない。

リヴァイ兵長の隣に、
私の大親友がいるからだ。


[私は生きている限り、兵長の隣を狙うわよ]

そんなふうにユキに宣戦布告したのもいい思い出だ。今ではユキには敵わないと完全に諦めてしまった。

兵長を心から敬愛し、隣で健気に支え続けるユキ。

そして二人でいる時の、お互いがお互いを信用していると言わんばかりの表情を見た時に私は諦めたのだ。

兵長にあんな表情をさせられるのはユキだけで、ユキがあんな表情を浮かべられるのも兵長の前でだけ。

警戒心が異常に強い二人がこんなにもお互いを信用できるというのは、あの二人でしかありえない。

そもそも人類最強と呼ばれる兵長は私の手には余りすぎる。人類最強の兵士長と、彼を側で支える実質調査兵団実力NO,2の副兵士長。これほどお似合いな二人がいるだろうか。

もちろんユキに恨みなど全くないし、大の親友だ。2人が幸せなら私も嬉しくなるし、この先も幸せであってほしいと心から思う。


そして今現在、
私は何をしているかと言うと…


『こういうのってわくわくするね』

「…オイ、静かにしないと起きちまうだろうが」


私とユキ、オルオの三人で廊下の影から一つの扉を見張っていた。

扉の先は今回私たちが監視をすることになったエレン・イェーガーの部屋。

日替わりで監視することになっていて、今日は私たちの班。(ちなみに昨日は兵長、グンタ、エルド)


「何だか楽しそうね、ユキ」

『こうやってコソコソするのって楽しくない?見つかったらって思うとドキドキするし』

「…ふっ、そんなことを言っているようじゃ見つかっちまうぜ」

「…オルオ、こんな真夜中にそのテンションやめてくれる?ツッコむのも面倒臭いから」


珍しくキラキラと目を輝かせるユキと、面倒臭いテンションのオルオ。

ちなみにユキと兵長が別の班なのは、非常事態があった場合どちらかが対応できるようにということらしい。

兵長自らの判断だが、
彼の内心は穏やかではないだろう。

今日も「任せてよ」というユキに不満そうな顔をしていた。


ーー…ガチャッ。


「…なんだ?またあいつトイレか?」

「きっと緊張で寝られないのよ」


暫く見張っていると、今日何度目かのお手洗いに起きるエレン。

グンタの話だと昨日もこんな様子だったらしい。私たちに監視されるというこの状況下では呑気に寝られもしないだろう。

可哀想だがしょうがない。


「ユキ、記録書いてく……」

『…Zzz』


ね、寝てる!?

後ろを振り返ると、壁に背を預けながらすやすやと眠っているユキの姿。

急に声が聞こえなくなったと思ったら寝てたの!?さっきまで楽しいとか言ってたくせに何と言う早業…。


「…どうするペトラ。完全に寝ちまってるみたいだが」

「そう言えば兵長が言ってたわね。…お前はすぐ寝ちまうんだからやめておけって」


交代でエレンを監視しよう。
という話になった時に、兵長とユキがそんな会話をしていたような気がする。

ユキがすぐに寝てしまうのは兵団内では結構有名な話だ。…あれだけ意気込んでいたのに、こんな無防備に寝ちゃって。


「…しょうがねぇな」


オルオが自分の上着をユキにかけると、小さな体がすっぽりと包まれた。


「…オルオ、その顔兵長に見られたら殺されるわよ」

「な、なんだよその顔ってのは。全く検討がつかない」

「赤くなってるわよ」

「…!…き、気のせいだ」

「まったくもう…」


ーーバタン。

トイレから帰ってきたエレンが、
再び自室へ戻ってきた。


**
***


「昨日の報告です」

「ご苦労だった」


明朝、兵長に記録を渡すと”昨日と変わらないな”と一言。


「今日は兵長の班ですね、よろしくお願いします」

「あぁ。…それにしても昨日徹夜した割には珍しく元気じゃねぇか」


兵長がユキの方に視線を向ける。そりゃぁぐっすり寝てましたからねその子。


『だって寝ちゃったから』


えええ、言っちゃうの!?
てっきりいつも憲兵やら本部の人間にやるように上手く誤魔化すのかと思いきや、素直に白状するユキ。


「…お前な」

『初めは張り切ってたんだけど、やっぱり駄目だったね』


これには兵長もため息をついている。


「本当にお前は寝汚い奴だな、廊下なんかで寝て風邪でもひいたらどうする」

『それは大丈夫、昨日はオルオが上着をかけてくれたから』


”オルオが?”
と、兵長の視線がオルオに向けられる。


「……そうか、…悪かったな」

「は、…いえ、当然の事をしたまでで…」


兵長に褒められ始めは喜んでいたオルオだったが、兵長の眉間に深い皺が刻まれているのを見て混乱している。

要は兵長がオルオに嫉妬しているのだ。本当は自分が一緒の班になりたかっただろうに、已む無く別々の班になり、更に他の男の上着をかけられたのだから。

そんな兵長の気持ちを馬鹿で鈍感なオルオが気づくはずもなく、”どうして俺は睨まれてるんだ?”という視線をこっちに向けてくる。

頼むから私にふらないでほしい。
こっちに飛び火したらどうしてくれるんだ。

結局報告は何とか無事に終わり、「今後こいつが寝こけていても放っておけ」と言われ、その場はなんとか収束したのだった。





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