番外編
□小ネタ
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小ネタ(2話)
*番外編「特別な日」
リヴァイの誕生プレゼント作成の為にナナバの部屋でマフラーを編んでいた時のお話。
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「ねぇ、ユキ。真剣にやってるところ悪いんだけど…もし誰か来たらどうするの?」
隠れるところないけど、と目の前で二本の棒と毛糸に苦戦しているユキに問いかければ、彼女はその手を止めることなく口を開いた。
『大丈夫じゃない?別に編みもの教わってるだけなんだから』
「それはそうだけどさ、もしリヴァイ兵長とか来ちゃったらどうする?」
ぴたりと小さな手が止まる。その姿はまるで悪戯をしていた子どもが親に見つかってしまった時のようでなんだか可愛らしい。
『…まさか。来たことないでしょ?』
「ないね」
ユキの鋭い瞳が向けられる。…ちょっとからかいすぎたらしい。ここは話をそらすことにしよう。
「ハンジ分隊長ならあるわよ」
『ハンジには絶対に見つかりたくないね。面倒になる』
「じゃぁもしハンジ分隊長が来たらどうする?ユキでもきっと箪笥の引き出しの中には隠れられないわよ」
『適当にドアの後ろに隠れてればいいよ』
「まさか開いたドアの後ろ?古典的すぎない?」
そんなこと今時子どもでも通用しないよと言うと、ユキは万が一来たらねと再び手先を動かし始めた。
まさかユキからこんな冗談みたいな言葉が聞けるとは思わなかった。もっとベッドの下に潜り込むとかクローゼットの中に自分が入れるくらいのスペースをあけてくれとか言うかと思っていたのに。
−−…コンコン
「『…!!』」
そんなとき、背後の扉がノックされる音が響き渡った。私とユキは身体をビクリと震わせ振り返る。
「は、はい」
「私だよ、ハンジ。ちょっといいかな?」
…本当に来た!
噂をすればなんとやらとはまさにこのことだとユキに視線を向ければ、編み物セットが入った籠を抱え扉の方に走っていく。
まさか本当にやるのか!?あの作戦を!?
「ちょっと待ってください」
ぴったりと壁に張り付いたユキはこくこくと頷く。いやいや、本当にやるなんて思わなかったけど絶対にバレるよそんなところ!
万が一部屋に入ってきたら終了だよと口パクすれば、何故か『がんばれ』と返された。
頑張れって、ハンジ分隊長を部屋に入れないようにうまく追い出せということだろうか。
私は深くため息をつく。しかし、もうやるしかない。可愛い後輩…といっても相手は副兵士長だが…のために一肌脱いでやろうと深呼吸して扉を開けた。
「お待たせしました」
「いや、こっちこそ急に押しかけちゃってごめんね。この書類を届けに来ただけなんだ」
「そうでしたか、わざわざすみません」
頭を下げると分隊長は「じゃぁねー」と言ってあっさりと去って行った。
パタンと扉を閉める。すかさず扉に耳を当てて足音を聞くユキに習って扉に耳をつければ、足音はすっかり遠くへ消えていった。
私とユキは視線を合わせる。そして二人で吹き出すように笑いあった。
『あははは!本当に来るとは思わなかった!』
「もう焦らせないでよ!ユキったら本当にそこに隠れようとするから焦ったじゃない!」
『でもバレなかったよ、こんなにうまくいくとは思わなかった!』
その後、二人は暫くお腹を抱えて笑っていたとか。
end
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ユキが104期の教室に教えに行くようになってから間もない頃のお話。
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『へぇ、訓練兵って座学もやるの』
「そうなんですよ、でもコニーとサシャが全然できなくてさ。いつもアルミンがつきっきりで教えてやってるんだ」
へー、と相槌を打ちながら二人を見ると、確かに勉強ができそうな風には見えなかった。…エレンも同じだが。
「これじゃぁアルミンが過労死しちまうぜ」
「失礼ですね!私はコニーよりはできますよ!」
「なんだと!?こいつよりは俺の方がまだできる!」
「じゃぁ次のテストで勝負しましょう!」
なんて言い合っている片隅で、アルミンが苦笑いを浮かべている。エレンは「どっちも同じだろうが」と辛辣な一言。
『ねぇ、訓練兵ってどんなこと教わってるの?』
「一般的な子どもが学校で習うようなことですね」
「姉御、これを見て欲しい」
どこから取り出したのかミカサが差し出してきたのは、訓練兵が使っている教科書のようだった。
思っていたよりも分厚くしっかりとしている。訓練兵は厳しい訓練に加えてこんな座学までやっていかなくてはいけないのかとパラパラと捲った手が止まった。
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***
一方、リヴァイはイライラとする心を静めながら馬を駆けていた。原因はもちろんユキだ。
今朝の訓練を終えたユキは訓練兵のところに行ってくるとふらりと出かけていった。…が、夕方になっても帰ってこない。
夕飯時までには帰って来いとあれだけ言ったのにも関わらずだ。これは一発くらい仕置きが必要だと訓練兵舎に到着したリヴァイは早速キースを見つけた。
「キース元団長…いや、キース教官。うちの副兵士長が戻らないんだが」
リヴァイがそう言うとキースは厳しい口調で口を開いた。
「あの娘を返すわけにはいかん」
「は?ふざけるな、話が違う。ユキは調査兵団の任務に支障がない程度にしか貸さない約束だ」
「…あの程度の人間が調査兵団の副兵士長を務めていたとは。もう少し自覚を持ってもらわねばならん」
リヴァイは再び、は?と眉間に皺を寄せる。何を言っているのか甚だ疑問だがそんなことはどうでもいい。
ユキを連れて帰るぞと言い、居場所を吐かせてそこへ向かえば、扉を開いた直後…目に入ったのは二人の見知らぬ訓練兵とユキが机に向かって頭を抱えている光景だった。
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「…で、部屋に入ったら劣等生とユキが頭を抱えていたと」
「あぁ。無理やり引きずってきた」
ユキを連れ返してきたリヴァイは呆れたようにため息をついた。対してユキは頬を膨らませ、不満を体現している。
「ユキは勉強やってこなかったの?」
『するわけない。必要にも迫られなかったから』
「だったらリヴァイだってそうじゃないの?」
「常識くらいはできる。」
『…裏切り者』
お前が常識を知らなさすぎるんだろうが、と言われユキはリヴァイに向かってべーっと舌を出す。
確かに今まで学力を問うようなことをしなかったからわからなかったが…、
「リヴァイも気づかなかったんだねぇ」
ユキのことをなんでも知っているこの男なら知っているかと思ったのに。
「文字が書けたからな」
「基準が適当すぎない?」
この一件でユキが勉強に疎いことが露呈してしまった。
end