黒猫
□黒猫の昔話
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『そうだ、仕事しよう』
ヴァリアーに来てから早幾日。
どたばたと騒がしい日々が過ぎ、ちょっと落ち着きが出てきた頃。
ボクの部屋も作業部屋も貰えて、前の家からのお引っ越しも済んだ。
さすがヴァリアーといったところか、ボクが貰った部屋たちは、どれも一級品だった。
広さは文句なし、置いてある家具のどれもこだわりを持った良いものばかり。
作業部屋は、何も無くて狭いほうが好きなのに……
まぁ、文句は言いません。贅沢も言いません。ごめんなさい。
幹部達も今は仕事中なのか、屋敷はいつもより静かになっている。
……………=、邪魔されない。
『っよし、仕事たまってるだろうし、やりますか!』
黒猫の作業はマイペースかつ繊細。
武器を注文する人達もそれは心得ているので、期限などはあまり決められていない。
たまに、急いで欲しい!ってのはあるけどねー。
仕事用の、白いノートパソコンを開く。
これに大体の仕事は入ってる。
仕事がずらりと書き込んである欄を立ち上げ、上から順に目で追っていく。
…………こういう武器の注文って、銃が比較的多いんだよね。
部品多いし組立めんどいし、一人じゃやる気が起きない。
フゥ
『…あ、風を呼べばいいや』
フゥ
風っていうのはボクの匣兵器で、風属性の風猫。
机の上の匣とリングを手繰り寄せ、右手の中指にリングを装着。
はぁー、開匣!
カチッ、ポン!
よく匣に炎を注入?するとき、ガッ!!とか乱暴にやる人いるけど、ボクはしない。
なんか、壊しそうだし。痛みそうだし。
けっ!こんなの壊れればいいじゃん!
何で大事に扱ってんのかわかんないっつーの!
…え、ところで風属性って何だ、カス。だって?
しょうがないなぁ、教えてあげようじゃないか!
『ってわぁぁ、ボスー!』
「……………」
勝手に部屋に侵入しないでいただきたい!
そしてこっそり後ろに立つのは止めてくれ!心臓止まるから!
職業柄後ろ取られんのは嫌いなんだってーっ!
それを早口で何とか説明すると、ボスは「ぶはー」と笑い前に来た。
…スクアーロいわく、この人が笑うのはレアだそうだけど。
ボクが此処に来てから、何度この無邪気な?笑顔を見たことか。
「で、この猫は何だ」
『あぁ、ボクの匣兵器の風ちゃんだよ』
「よろしくにゃ!」
「っ!!」
『え、どしたのボス』
風が挨拶をしたとたんに、ボスが体を強張らせた。
猫嫌いとかかな?それはないかー。
「てめぇの匣兵器は、口が聞けるのか」
『え?』
「だから言ったじゃんのあー、僕が話せるのは凄いことなんだよって」
あー、そういえばそんな事、言ってた気がする。
そういうと風は「ひどいよー!」とか言いながら膝の上に飛び乗ってくる。甘えん坊なんだよね。
嘘だって。あんなに一生懸命に熱弁してたの忘れるほど、ボクは衰えちゃいない。