黒猫
□tea time!
1ページ/3ページ
「のあちゃん!お茶でも飲みましょう!」
みんなも誘ったから、準備が出来たらバルコニーに来てちょうだいね!
そう言い逃げしたリア姉を追いかけようとして出た、廊下の甘いにおいに誘われたのがついさっきのこと。
ふわりと鼻をくすぐる香りに、誘われない甘い物好きはいないだろう。
いったん作業(銃の組み立て)を中断し、バルコニーに向かって歩みを進める。
みんなって、みんな?
幹部のみんな?
仕事とかないのかな…。ボクはこんなにも忙しいのに。
そんなに暇なら手伝って欲しいくらいだよ。
猫の手だって借りてるんだからね。(提供、風猫)
甘いにおいを頼りに、行ったことのないバルコニーを探し求める。
その後、顔見知りのメイドさんに案内をお願いしたけど。
くんくんと鼻を鳴らし、メイドとともにバルコニーにやってきたのあちゃん。
今日は太陽がまぶしい快晴。
お外でティータイムってのも悪くないでしょ?ンフ♪
まぁお茶なんていうのは名前だけで、本当はみんなのあちゃんと仲良くなりたいのよ。
この子ったら妙に真面目で仕事熱心だから、あまり談話室とかで顔を合わせないし。
部屋に遊びに行ったら行ったで、『ちょっと、邪魔かなー…』みたいな視線を向けるし。
こんな風に機会を作ってあげないと、あんまりお喋りとか出来ないのよー!
だ・か・ら!
「今日はたっくさんガールズトーク展開するわよー!」
「こんな男だらけでですかー?」
「ガール「ズ」なんてどこにいんだよ。女はのあしかいねーっつの」
「ひどいわ二人とも!ちゃんとここにもいるじゃない!お・ん・な・の・こ♪」
「「「うぉえ」」」
「ちょっとぉ!スクアーロまで何よ!そろって吐くことないじゃない!」
そんな私たちの様子を見て楽しそうに微笑むのあちゃんを、テーブルの真ん中の席に座らせる。
誰かだけに独り占めなんてさせないわよー!
にしてもこの子、やっぱりよく笑うようになったわ。
来てすぐのときなんか、ニコリどころか、表情がピクリとも変わらないんだもの。
やっぱり、ボスの前で泣いてたあたりから変わったわね…。
女の子は笑顔が一番よのあ!その調子で頑張りなさい!!
『うわ、おいしそう!』
「スフォリアテッラを作ってみたのよ♪おいしく出来たと思うけど…」
スフォリアテッラは、貝の形をしたお菓子で「ひだを何枚も重ねた」って言う意味があるの!
中身はカスタードクリームにしてみたわ!
私が入れたアップルティーと一緒に召し上がってちょうだい?
「って、聞いてないわね…?」
『わー!初めて食べたー!』
おいしー!とかいいながら、次々とスフォリアテッラをほおばっていくらいむ。
かわいい顔で笑っちゃって、ほっぺたにクリームついてるわよ?
ウフ、ほんとに可愛いんだから♪
「う゛ぉおい… ついてるぞぉ」
『んぅ?』
「「っ!!」」
あらスクちゃんってば、やるときはやるわね!
のあのほっぺについていたクリームをそっとぬぐい、自分の口へと持っていく。
んもう、そんなことされたら女の子は弱いのよぉ?
『ありゅがひょー』(訳・ありがとー)
「……ししっ」
「鈍くてよかったでーす」
「う゛ぉ、何のことだぁ?」
スクアーロったら、無意識だったの?
相変わらずお母さんみたいに面倒見がいいわねぇ。(ほっとけぇ…)
それよりも今、問題なのは……
「のあちゃんっ!!!」
『っ!? っく、うっ、』
「ちょ、大丈夫かよ!?」
……あら、詰まらせちゃったわ。
なんかこのシーン、既視感あるわよ…
アップルティーで飲み干す。
ごくりとのどを鳴らすその姿、微妙に男心を煽ってるの気づいてるかしら?
「…それよりのあちゃん!」
『っはい!?』
びっくりして姿勢を正す。
いいわ、そのまま心して聞きなさい!
「あなたには、乙女心が足りないわよ!!」
『……はぁ?』
「たとえば今のシーン!普通の女の子だったら赤面したっておかしくないのよっ!」
なのにお礼言って終わりなんて、そんなんじゃ駄目よ!
つまらないのよそんなんじゃ!
女の子は表情豊かでないと!
「今日はのあちゃんの「乙女心」を鍛えるわよ!」
『……えー』
「もう!ちゃんと返事しなさいよ!」