黒猫

□smaller than
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「どうしたぁのあ!」

「朝から大きい声出して…、ってあら?」



いつも起きるのが早めな二人、スクアーロとルッスーリアはのあの悲鳴を聞き付けて部屋に様子を見に来た。

コツコツと軽いノックをし、のあの部屋の扉を開けると。



「い、いないじゃない…?」

「確かにここから聞こえたよなぁ…?」



部屋に入って中を探すも、のあらしき人物は見当たらない。

あるのは二袋分くらいの飴玉、作りかけの銃の部品、磨ぎ途中の剣くらいだ。


のあの気配はあるものの……

これは明らかにおかしい。何かがあった。



「のあちゃんー?」

「居たら返事しろぉ!」



部屋のさまざまな場所を見渡しながら声を出して探す。


すると、小さな『ここー…』という声と共にもぞもぞと布団のごく一部が動いた。

人間がいるとは思えない子猫一匹分くらいの大きさの膨らみだが、声は確かにそこから聞こえてくる。


そっとその布団をめくってやると、



「ゔ、ゔお゙ぉぉぉぉおいっ!!?」

「え…、のあちゃんなの!?」

『………おはようございます』



オレとルッスーリアは目を見開いて口をぽかんと開け、それを凝視した。


そこにいたのあは……


小さかった。



いや、こういうと誤解が生じるかもしれねぇ。もう一度言い直してみるかぁ…


のあが、縮んだ。

例えるなら、何かの二次元キャラのフィギュアのようなサイズにまで縮んでいた。


ゆ、夢か何かじゃねえのか!?

目を擦り、頬をつねってみても目の前の状況は全く変わらない。

小さなのあはジャージ姿でこちらを見上げている。



「ちょっと…、のあちゃんそれどうしたの?」

『……ボクが聞きたい』

「いつからだぁ?」

『…起きたら、なってた』



ミニマムなサイズでちょこんとベッドの上に正座し、首を傾げて原因を考えこむのあ。

小さいけれどくりくりとした漆黒の瞳はせわしなく動き、ちょこまかした動作は小動物を連想させる。

ちっさい手を頭に当ててみたり、絹糸のような髪をいじってみたり。


……か、可愛いぞぉ。

人形みてえだぁ。

ルッスーリアも同じようなことを思ったみたいで「洋服作りたいわぁ…」とかぼやいている。



『もー、リア姉!真面目に考えてよー!』

「ドレスのデザインをかしら?」

『ちっがぁう!どうすれば戻るのこれ!』

「落ち着けのあ!ベッドから落ちるぞぉ!」



両手を振り回し、ベッドの上を小さい体でぴょんぴょんと跳ねる。

のあは相当テンパってるみたいだ。

朝起きていきなり小さくなってたら、テンパりもするだろうがなぁ。


その時、三人分の無線機が音を立てた。



『ん、何ー?』

「あら、ボスから緊急召集かかっちゃったわ」

「のあも呼ばれてるぞぉ」

『うー、めんど……』



ぴょこんと小さなポニーテールを揺らし、ベッドから床に飛び降りる。

足は大丈夫なのかぁ……?


ちょこまかと歩き進み部屋を出ようとするが、なにぶんコンパスの差がある。

進むスピードが遅い。すごく遅い。

ちまちまちまちまちまちま………



「ゔお゙ぉい!イライラするぞぉ!」

『にゃ゙、わぁぁ!?』

「あら、スクアーロったら。貴方も隅に置けないわね♪」



このままじゃ遅れてかっ消されるだろぉ!

小さいのあをひょいと抱き上げて腕の中に閉じ込め、自分のペースで歩きだす。

隣から野次を飛ばしてくるルッスーリアも、腕の中でひたすらわたわた暴れているのあも見ないふり。


グラスが飛んでこないことを祈りつつ、駆け足で進む。



 
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