黒猫
□cat meets varia!
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「ししっ、この任務全員で行く必要なかったんじゃね?」
「あっという間に終わりましたねー」
「こんなもんだとはなぁ…拍子抜けだぜぇ」
ヴァリアー幹部全員で出向いた任務、あるファミリーを潰すこと。
しかし、強いはずだったそのファミリーは足を運べばあらびっくり。
突然の内乱によって壊滅寸前だった。
要するにその任務は結局たいしたことのないCランクもいいところの任務になってしまった。
予定時刻より大幅に早く終わってしまった任務に、幹部全員は物足りなさを隠せない。
そして、みんなで帰るところである。
「てか王子歩くの怠いんだけど。迎えの車は?」
「渋滞で来れないらしいわよぉ♪」
「渋滞、ですかー……」
「ボスを歩かせるとは何事だ!」
「ゔおぉい、うるせぇぞレヴィ!」
「お前が一番うるせぇ、ドカスが」
てなわけで、暗殺部隊歩いてます。
アジトまでは大体30分くらい?の道のり。
真っ黒い服に身を包んだヴァリアー幹部達が街中を白昼堂々と歩いています。
――チリ、ン
不意に耳に届いた、澄んだ小さな金属音。
幹部達の視線が自然にそちらへと向く。
「……うわー。 あれ、見るからに怪しげな奴ですねー」
「あら、本当ねぇ……」
…………そこに、いたのは。
足まで届く長くて真っ黒いコート。
顔を隠しているフードには、大きな猫耳。
首もとで揺れる、赤いリボンで結ばれた大きな金色の鈴。
小さい体で大きな黒いトランクを引きずって、これまた白昼堂々と歩いている。
そんな怪しい格好した奴が暗殺部隊の前から歩いて来た。
そして、すれ違う。
その怪しい奴から大分距離を取った後、幹部達は口を開く。
「……なんだぁ?アイツ」
「あれ猫耳かしら?可愛いわねぇ」
「ぬぅ、一体何者だ?」
「あー、王子アイツのこと聞いたことあるかも」
「そうなんですかたまには使えますね堕王子、でっ」
カエル帽子に深くナイフが突き刺さった。
武器職人、黒猫。
年齢、性別などの正体は一切不明の完全秘密主義。
腕は世界一を争えるほどらしいが、法外な料金をとることでも有名。
街中で普通に取り引きする図太い奴。
「そんくらいしか知らねーけどな」
「オレも聞いた事くらいはあるなぁ。こんな近くに居やがったのかぁ…」
「あ、もしかしてこれから取り引きするんじゃないですかー?」
黒い小さな物体が向かっている先には、どこかのファミリーが。
向こうもトランクを抱えている。
多分、中身はぎっしり詰まった金だろう。
「うししっ、なんか面白そー。ちょっと見てかね?」
「えー、ミー早く帰りたいんですけどー」
そういいながらもみんなは、足を止める。
何故かというと、その取り引き相手と見られるファミリーから殺気が出ていたから。