黒猫
□黒猫の睡眠
3ページ/5ページ
「えーと、新しいタオルは確か……」
そのとき、無造作に部屋の扉が開かれる音。
何事かと部屋の入り口の方を見ると、そこにいたのは。
「ッチ… カエルだけかよ」
「…は?」
…出たな堕王子め。
ノックもせずに人の部屋にズカズカ入り込んでくるのは、ティアラを乗っけた自称王子。
「自称じゃねーし」
「ぃだっ! 何なんですかいきなり、勝手に入ってこないでくださいー」
「うしし、しーらね。だってオレ王子だもん」
ここに拉致されてから何度目になるか分からない堕セリフをスルーして、やっと見つけたタオルを引っ張り出す。
よし。
タオルにTシャツに短パン。
下着はさすがに用意できませーん。
それを見た堕王子もさすがに気づいたのか。
「何、のあ風呂入ってんの?」
「センパイには関係ないですー」
「関係あるっつーの」
またもや飛んできたナイフを華麗に避ける。
ミーだってたまには避けますー。
後ろのほうで舌打ちが聞こえたがシカト。
まだのあがお風呂に入っていることを確認し、手早く手の中のものを置いてくる。
「ここに置いておきまーす」『んー』
声かけも忘れずに。
「ししっ、カエルずいぶん必死じゃね?」
「…何がですかー」
「のあ。そんなに気に入ったわけ?」
ずばりと言い当てられ、一瞬言葉に詰まる。
…仕方ないじゃないですかー。
化粧濃くして香水振りまいてるケバケバ女なんかより、のあのほうが断然可愛いんですもんー。
「ま、それはオレも否定しねーけどさ」
ベルセンパイもやはり感じ方は同じだったらしい。
新鮮さって、大事だと思うんですよねー。
しかものあ、見てて飽きないんですよー。
まだこんな短時間ですけどー。
ポーカーフェイス気取ろうとして、頑張ってる所とか。
時間かけてでも崩してやりたくなるんですよね、あーいうの。
「ふーん」
今のところの本心を語ると、ベルセンパイは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「ま、最終的にのあはオレの姫。ってことだから」
「はぁ?寝言は寝て言えよ堕王子。のあはミーのにしますからー」
「カエルなんかに負けねーし」
「それはこっちのセリフです。王子(仮)」
「ってめ!!」
空気を切って、ミーのすぐ横をナイフが通過する。
痛っ、何本か刺さりましたー。
…あれ?
今、ミーの後ろで「カチャッ」って、扉の開く音が…