黒猫

□匣兵器?武器のうちだよ
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「あ、いたし。」

『やほー、おじゃまします』

「ゔおぉい、何しに来たぁ!?」

「ほんの暇つぶしですー。」





スクアーロの自室到着。


なかなかいい部屋ではないか。

綺麗に片付いてる。山のようなトロフィーも含めて。




おおぅ随分と真面目だね、剣の手入れしてるよ。

………自分で手入れできるなら、ボク必要ないよね?

自分の武器はやっぱ、自分で手入れすべきだって。

不調とか読み取れるしさー……






『よしスクアーロー、匣兵器見して』

「あ゙ぁ? 何でだぁ?」

「それが、かくかくしかじかでしてー」

「……フラン。それで伝わるほど、人生は甘くねぇぞぉ」

「冗談ですってー。ベルセンパイ、お願いしますー」

「おいふざけんな。なんでオレなんだよ」



なんだかんだで、先程のいきさつを話したのはベル。

にゃはは、お疲れ様ー。






「そんな事で開匣させんのかお前らぁ!」

『えー、いーじゃんか。見せてー、何の動物ー?』

「ぐっ! 揺するんじゃねぇ!」



両肩を掴みゆさゆさ。

頭はがくがく揺れる。

それに合わせて銀髪もさらさらと、彼の視界を奪う。


ふっふっふー、これで作業は出来るまい。



『武器なら後でボクが研いであげるからさー。珍しくタダで』

「タダ…?のあにしては珍しいな。やってくれるのかぁ?」

『任せて!』<グッ>

「それなら助かるぜぇ。のあの方が断然腕が良いからなぁ」

『にゃっはっは、いえいえそんなー』

(地味に照れてる………)



急に褒められたら、照れるじゃないか。

赤面したりはしないけど、ごまかすようにポニーテールの毛先をいじってみる。

だいぶ伸びたなー…… じゃなくて。



『さぁ早く開匣してよ見たいよー!』

「しょうがねぇ…… 開匣!」







ボッ、ガチャン! ドシュッ!


豪快な効果音と共に現れたのは、



「暴雨鮫だぁ。」

『……鮫ー? すごー、どこから息してんだろ。てか、浮いてる』

「ししっ、名前のまんまだろ? 鮫」

「コイツも、なかなか懐いてくれないんですよー」

「ったりまえだぁ。そう簡単に、オレ以外に懐かれてたまるかぁ」




自信満々に胸を張るスクアーロ。

別にそれは、威張ることではない。


……だが。







「……スクアーロ隊長ー」

「ん゙?なんだぁ?」



フランが指で指し示した先。

………そこには。







『よーしよーし♪お名前は何て言うの?』



「ししし、完全に手なずけられてんぜ?」

「普通にじゃれてるんですけどー」

「……アーロは、凶暴なはずなのになぁ」





のあに身を寄せている、スクアーロの「簡単には懐かない」はずの匣兵器がいた。


本当に鮫かお前?と聞きたくなるくらいの人懐っこい動作で、のあに対しての愛情を表現している。







『アーロって言うの?そうかそうか』



鼻先をそっと撫でてやると、ぐるりとお腹を見せる。

まるで、「こっちも撫でて」とでも言うように。

警戒心や敵対心が、微塵も感じられない。



『にゃっは、鮫肌ー』

ざらざらだねー、とか言いながらのんきに撫でてやがる。あ、アーロに乗っかった。

でっかい胴体に跨がって、空中遊泳を開始している。

手はアーロのヒレに添えて。


お前はイルカの調教師か。





「しし、のあ手痛くねーの?」

「わー、ミー初めて鮫触りましたー」

『いぇーい、楽しー』



それを見たベルとフランも、興味がわいたかアーロに手を伸ばす。

いつもは嫌がるアーロも、今日はとても従順だ。


いつもならベルたちを跳ね飛ばしてもおかしくないのに、今日はされるがまま状態。


「ゔおぉい、調子にのんなぁ!」



それを見たスクアーロはやきもちかはたまた何か、声を荒げる。






「そーだ、スクアーロ、匣に戻してみ?」

「多分言うこと聞かないんでー」

「…そうなのかぁ?アーロ、入れ」




主人が匣を向けても、

『行かないでいいの?アーロ』

……………無視。




「やっぱ、のあは匣兵器操れるんじゃねーか?」

『よし。アーロ、戻ろうか』



まるで飼い馴らされたイルカのように懐いていたアーロは、名残惜しそうにのあから離れて。






パタン。


スクアーロの匣に戻った。








「……やっぱ、操れてますよねー」

「あ゙ぁ、興味深いな。他の奴らの所には行ったのかぁ?」

「うししっ♪これから行くとこ」

『ありがとスクアーロ。後で剣研ぎに来るねー』

「あ゙ぁ。結果も教えろよぉ」



パタン。





これでやっと、うるさい奴らがいなくなった。




「ったく……」




匣を見つめながら、一人ごちる。


主人の言うことも聞けねぇとは、何事だぁアーロ。

そんだけ、のあの奴がすげぇのかぁ?






それとも………



オレと、シンクロでもしてんのか?


のあだけには懐くなんてなぁ。







「………って、これじゃあオレがのあの事好きみてぇじゃねぇか!」






何言ってやがるっ!!


………いや、でもなぁ。

それはそれで…………







スクアーロの、心の葛藤は続く。








   
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