黒猫
□強風警報発令 前編
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「……様!のあ様、起きてください!」
突然の叫び声と共に、体を激しく揺すられ目が覚めた。
この、ゆるいウェーブのかかった綺麗な茶髪の持ち主は……
『ノエ、ル?だよね?』
時々遊びに来たり、お菓子を持ってきてくれたりしているメイドさん。
「覚えていてくださったんですか!」
名前を言い当てられたことがうれしかったのか、張り詰めた空気が一瞬途切れた。
「って、そうじゃなくて!敵です!幹部様達がいない隙に、乗り込まれたんです!」
『……っ!?』
「…にゃ?どしたののあー」
ひっついてくる風を無視し、立ち上がる。
ノエルの話によると、現状はとても危険な状態で、隊員達が応戦しているけど、敵も相当の強者。
戦力がどんどん削られているらしい。
「逃げてくださいのあ様!もう敵はそこまで…「ぎゃああっ!」
ノエルの声は、野太い叫び声によって遮られた。
どうやら、ヴァリアーの隊員がやられたようだ。
「緊急事態なんですっ!のあ様だけでも逃げてください!」
『そ… そんな事、出来るわけないよ!』
叫び声は今も続いている。
敵は、意外と近くまで入り込んできているようだ。
『ノエルは、銃使える?ボクも戦うよ!』
その辺にあった銃を拾い上げる。
「い、一応、自分の身を守る、くらいなら…。でものあ様は『大丈夫だよ』
ボクの身を案じてくれるのは、うれしい。
けど……。
『ボクだって、みんなの事は大切だから。守りたいよ』
自分の武器を手に、廊下へと足を運ぶ。