黒猫
□tea time!
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うしし、なんかヘンなことになってね?
乙女心鍛えるとか、オカマムチャ言い過ぎ。
だいたい、のあに乙女なところとかなくね?
ま、オレはそんなのあも好きだけど♪
一日中大体が黒ジャージか黒ツナギ。
外に出る時だって猫耳つきの黒コート。しかも顔隠すし。
色がついてる服着てるの、見たことないぜ?
そんなやつに「オシャレ」の話したって意味ないって。
「のあちゃんは絶対ピンクとか似合うわよ」
『え、気持ち悪っ』
「そんなことないわ!女の子はピンク着てナンボよ!」
『それこそそんな事ない。なんでピンク?黒カッコいいよ』
「若いうちしか明るい色は着れないのよ?」
ほら、会話成立してねー。
ふーん、のあが、ピンクのふわふわドレス………
……やべぇ、超似合う。
「ルッスセンパイ、ミーものあに聞きたいことがー」
「あらなぁに?フランちゃん」
こんなガールズなトークの雰囲気なら、やっぱこの話題でしょー!
「のあの「好きなタイプ」知りたいですー!」
「「「!!!」」」
『へ?』
他の三人も興味津々ー。
そーです、このテの話題こそこんなときにしか持ち出せないんでー。
さぁのあ、教えてくださーい!
『好きなタイプ…? うーむ…』
「うしし、どんな奴?」
『んー、やっぱ第一条件は「ボクより強い人」だなー』
(((候補だいぶ削られたッッ!!!)))
だいたいの一般人は、のあに勝てません。
武器職人だし、それなりにはデキる。
しかも……
(((オレ(ミー)たち範囲内じゃね?)))
暗殺部隊の幹部なんだから、当然強い。
のあと戦ったことはないけど、勝つ自信はある。
「ミーならおーけーですねー」
「王子だってよゆーだし」
「オレだってのあには負けねぇぞぉ!」
『にゃは、言うねぇ。じゃあ今度勝負しようか』
「「「うん」」」
(((絶対勝つ)))
男軍はその後、のあが意外と強者であることを知るが、それはまた別の話。
「他にはなんかないのかしら?ほら、お姫様になってみたい!………とか」
「「「ないだろ」」」
『…………………っ、(汗)』
「「「あるの!?」」」
あぁんのあってば、女の子らしいところもちゃんとあるじゃない!
そうよね、お姫様は女の子の夢よね!
顔をぷいっとそむけるのあの頬は、ほんのり桜色。
照れちゃって、かわいいわー!
「ししし、じゃあ王子のところに来たら?お姫様にしてやるよ」
<ぐっ>『い……………、かない』
あぁもうこのツンデレ!
素直になったら、
「私がお姫様にしてあげるわよー!」
『っ!!』<ブンブン>
あら失礼ね、そんなに嫌がらなくても。
その後も、他愛のない話は続いた。
結婚するならいくつがいい?(する気ない)とか、ハネムーンは何処へ?(だから結婚しない)とか、その後の理想の住まいは?(以下略…)とか、ね!
「ところでのあちゃんは、赤い糸信じるかしら?」
『赤い糸?』
紅茶を飲むために伏せていた顔をあげる。
あら、ちょっと興味ありかしら?
「ステキよねー!運命の相手と繋がっている、運命の赤い糸!イヤーン、ロマンチック!」
「「キモッ」」
「失礼よ!」
のあちゃんはどうなのかしら?
顔色をうかがうと、
ガタン!
急に席から立ち上がるのあちゃん。
顔は伏せられていてよく分からないが、あまり機嫌が良くないようだ。
ぐっと力をこめた握りこぶし。
ふるふると震える肩。
『……………ボクは、』
しぼりだすような声。
今にも消えそうで、頼りないものだ。
『……ボクは、運命なんて信じない。』
決められた生き方なんて、大っ嫌い!
そう捨て台詞を残して、席を外してしまうのあちゃん。
………どうしたの、かしら?
「…あーあ。オカマ、のあ怒らしたんじゃね?」
「珍しく声荒げてましたよー」
「…えぇ、あとでちゃんと謝るわ」
「そうしろぉ」
決められた生き方なんて、大っ嫌い。……ね。
なんかにおうわね…… 女の勘よ!
『………はぁ、』
逃げ出してきちゃった。
ボクは、運命とかそういうのが嫌い。大嫌い。
ボクの人生なんだからボクが生きたいように生きるし、運命なんてものに振り回されるなんてまっぴら御免だ。
昔から、ずっと。
運命なんて言葉を聞くたびに吐き気がする。虫唾が走る。
たとえその「運命」の意味が、ボクの嫌う「運命」と違ったとしても。
みんなに、失礼な態度とっちゃったな。
すごく驚いてたし……。
今度、謝らなくちゃ。
→あとがき