黒猫
□けもみみ★ぱにっく 後編
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ケース 2
「のあー、遊びましょー」
『やだ』
「…即答ですかー。ミーちょっと傷つきまーす」
『だって、ろくな目に合わない気がするし』
「キョロキョロ… 堕王子いませんねー、よし」
ちょっと聞いた?
口で擬音言ったよこのカエル君。
わーびっくり。
しかも人の話聞いてない。
ベルがここにはいないことを確認すると、あろう事かカエルの帽子を脱ぎだした。
『…え? 何?』
「だーかーらー、遊びましょーのあ、この帽子で」
『…っはぁ!?』
最近は薬の影響なのか、ボクは中身まで猫化し始めている。
ふさふさした長いものを見るとじゃれ付きたくなるし(例、ベルor自分のしっぽ、ボスの羽飾り等)、丸いものだってつい追いかけたくなってしまう。
フランのカエル帽子だって例外じゃない。
任務のときは真剣だから大丈夫だけど、こんなくつろいでる時なんかに出されたら……。
「ほらほら、きっと楽しいですよー?」
目の前をコロコロと、転がっていく黒いカエル帽子。
『…ぅ、あ、』
キラキラと光が反射している。
本人の意思には反して、瞳は完全にカエルに釘付けになってしまう。
「おーい、のあー?」
フランの、ボクを呼ぶ声が引き金になってしまった。
『…っにゃ!』
ぱしっ!!
猫のように、反射的に手が出てしまう。
例えやりたくなくても、本能がそう導いてしまう。
「おー、やる気になりましたねー」
『にゃ、にゃあー……』
やりたくない!
こんなのやりたくないのに!!
手はどうしてもカエルを仕留めようと動いてしまう。
「にゃあ、なんてー。可愛いですねもー」
『う、うわぁぁあん!フランのバカぁ!覚えとけー!』
「はいー。一生覚えときますよ、猫耳のあー」
『う、みゃぁあー…、っ!』
やっとの思いで捕らえたカエル。
ぐいぐい押しつぶしてみたり、猫パンチを食らわせてみたり。
身体が、猫なりの遊び方を覚えているかのように。
しばらくカエル帽子で楽しんでいると。
「はいおあずけー」
『ちょ、フラン!』
楽しく遊んでいたところで、横からフランにカエルを奪われる。
ちょっと、渡してみたり奪ってみたりなんなのさ!
中途半端なんだけど!
『貨してー!』
「取れるものなら取ってみろ、でーす」
『んぐ、こんっの!』
立ち上がりながら、カエルを高々と持ち上げるフラン。
身長が小さいボクはこうされてしまうと、目標物に手が届かない。
『ふざっけんな!むかつくー!』
「ちっさいですねー」
『うるさぁい!!』
ぴょんぴょん跳ねてみても、カエルに届きそうになるたびにそれを避ける腕。
うがーっ、このやろー!
爪先立ちで必死に手を伸ばす。
(めちゃくちゃ必死なんですけどー)
届かないところがウケますねー。
頑張ってくださいチビすけー。
でもこのアングルはなかなか悪くないかもですねー。
カエルを必死に奪おうとしてくるのあ。
計算されているのか、と疑いたくなるような完璧な上目使い。
『返してー、貸してー!』
「だーめーでーすー」
『このケチガエル!』
「あ、そういうこと言う子にはもう二度と貸しませーん」
『小学生か!』
あー、可愛いですねー。
うねうねと揺れるしっぽが可愛さをさらにアップさせる。
そうだ、これシャッターチャンスじゃないですかー?
すかさずポケットから携帯を取り出し、構えてポチッ!
カシャァ!
『…何撮ってんの?』
「上目使いののあー」
『……は?』
動きを停止。
でも見上げてくる体制なのは変わらないんで、もう一枚ー。
はいチーズー!
『すな』
がしっ「あうー」
携帯ごと掴まれる。
でも、この写真があればベルセンパイが持ってる秘蔵写真とのトレードができますねー。
『ふむふむ。それは聞き捨てならないね』
「あ、ちょ! 携帯返してくださいー!」
いつのまにか口からこぼれてたみたいですねー。
これは一大事でーす!
『わ、いつの間にこんな写真を… 怖っ』
「わー!消しちゃダメですー!」
『変態になりたいの?ねぇ、なりたいの?今なら戻れるよ?』
「…ごめんなさーい」
携帯の画像消去。
確かに、変態雷親父と一緒にはなりたくないですねー。
その後の話だと、ベルセンパイも同じ目にあったそうでーす。