innocent starter
□Act.1-1
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「高町なのは……?」
一冊の本を片手に、少年は首を傾げ呟いた。知らない人だな、と。
場所は私立聖祥大附属小学校、図書室。
本、もとい、教科書を片手に立ち尽くす少年の名は槙原瑞希。女の子のような名前に少々コンプレックスを持つ小学3年生だ。
「どうしよう……」
瑞希はまだ見ぬ高町なのはの教科書を持て余していた。実はこの教科書、先ほど瑞希が拾った落し物。不自然に落ちていたそれは、きっと何かの拍子に落ち、誰も気付かずに放置されたものなのだろう。
「う〜ん……」
どうしたものだろうか、と瑞希は考える。元々彼は、どちらかと言えばお人よしの部類に入る。友達の忘れ物を見つけたら届ける、なんて行為は迷わずに実行する性分なのだが、今回は少し違った。
知らない人、ましては名前から察するにこの人は女子。
幸い学年は同じようだが、どうにも抵抗が生じてしまう。
「む〜……」
結局、瑞希は次の鐘が鳴るまで唸りながらその教科書と睨めっこをしていた