innocent starter

□Act.1-2
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鼻につく臭いは病院特有のそれだった。

「怪我はそんなに酷くないけど、随分衰弱してるみたいね」

白衣を着た女性がそう言いながらやって来る。彼女は先ほど洗っていたためか、水が滴っているその手をハンカチでふいていた。

「きっと、ずっと1人ぼっちだったんじゃないかな」

悲しそうな視線をベッドに横たわる彼に向けながら言った彼女はこの動物病院の院長。短く切り揃えられた髪に、ピンクのヘアバンド。とても成人女性には見えない容姿を持つ彼女は、目の前の子供達に安心させるように笑いかけ、言った。

「でも、もう大丈夫。すぐに元気なるよ」

だから心配ない―――その言葉を聞いた子供達、なのは達は目を輝かせた。

「ありがとうございます、院長先生」

なのはのお礼を切り口に、他の2人の少女はお礼を述べ、安堵の声をあげる。

「よかったね」

そんな中、心底安心した表情を浮かべる瑞希は優しく彼に言葉をかけた。

その言葉を聞いたなのはが彼に向けていた視線を上げ、瑞希を見る。この子は動物が好きなのかな――――そんなことを考えていた。動物病院の場所だって知っていたし、彼を見つけてからの対応も迅速だった。多分ここの院長先生とも知り合いで、今までに何度かここに来ているんじゃないだろうか。きっとそうなんだ、となのはは結論付ける。

「どうしたの?」

視線に気付いた瑞希が、なのはに疑問をぶつけた。しかし、安心からか、いくらか緩んでいるその表情。なのはもつられて頬を緩ませた。

「動物、好きなの?」

「……うん」

やや控えめに頷いた瑞希の頬はほんのり赤い。照れ臭いのだろう、目線もすぐに外されてしまう。

「そうなんだ」

しかし、なぜか嬉しくなったなのははにこりと笑った。
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