innocent starter
□Act.2-1
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気味の悪い色の空。人の気配をまるで感じない路地。そこには、およそ日常には似つかわしくない非日常な光景が広がっていた。
杖を構える不思議な格好をした少年と、その横でオロオロしている少女。肩に乗せたフェレットを除けば、この2人は非常に似た格好をしていた。
「な、なにコレーッ!?」
悲鳴、もとい、驚愕の声を上げたのはフェレットを肩に乗せた少女、なのは。自分の格好と手に持つ杖を交互に見やり、瑞希を見て、最後に目の前でのたうち回っている黒い何かを見る。そして。
「やっぱり、なにコレーッ!?」
盛大に叫んだ。
肩に乗ったフェレットは顔をしかめ、誰にも聞こえないような大きさで舌打ちをする。
「――今、何か言った?」
誰にも聞こえてないはずだった。はずだったのだが、彼女には聞こえていたのかもしれない。間髪入れずに飛んできた言葉に、フェレットの背筋に悪寒が走った。
「な、何もッ!!」
驚くほどの冷たい視線を避けるためか、必要以上に首を横に振るフェレットの姿は見た目以上に小さく見える。
「そう。ならいいよ」
フェレットは、にこりと微笑んだ少女の顔下半分を見ていた。いや、それ以上は視線を上げられなかっただけなのかもしれない。