innocent starter

□Act.2-2
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非日常の戦いから一夜開けた日の朝。

「おはよっ」

下駄箱で靴を履き変える瑞希に横から声がかかる。なのはだ。相も変わらずなツインテールはぴょこぴょこと跳ね、挨拶が返されるのをまだかまだかと待ちわびているようでもあった。

「うん、おはよう。高町さん」

跳ねるツインテールには目線を送らずに、瑞希は挨拶を返した。気にしたら負けなんだとは彼の持論らしい。

「ユーノくん、どう?」

既に上履きに履き変えていたなのはは、瑞希を待ちながら質問した。

実はあの後、ユーノは再び瑞希の家に連れ帰られたのだ。諸々の事情と、いま一つ治りきっていない怪我の治療をかねて。

「元気だよ。もうバッチリだって言ってた」

履き変え終わった瑞希が下駄箱を閉め、それを合図に2人は歩き出す。なのはより若干だが背の高い瑞希の視界の端に映るのは、動く栗色の何か。瑞希はそれを無視した。もう一度言う。気にしたら負けなんだとは彼の持論らしい。

「あ、そうだ。コレ」

思い出したように自身のポケットをまさぐり、何かをなのはに差し出す瑞希。訳も分からないまま、とりあえず手を出し、それを受け取ったなのはだったが、それが何なのかすぐに察した。

「――レイジングハート、さん」

瑞希に渡された赤い宝石。律儀にさん付けまでされた赤い宝石は、昨日、なのはの手によって猛威を振るったデバイス、レイジングハート。それは、昨晩の時とは違い、綺麗な球体に整形され、さらには、首にかけられるように紐が通してあった。持ち運び易いように、とユーノの粋な計らいらしい。

「それは高町さんが持っててだって。それで、僕はこっち」

じゃんと瑞希が見せたのは、なのはのものより幾分か小さい赤い宝石。紐や形など仕様は同じなのだが、どうにも大きさに目が行ってしまう。

「ちっちゃい……」

「綺麗に半分にはならなかったからね。そのせいで機能も偏ってるって、ユーノくんが」

瑞希は苦笑を浮かべ、自分のレイジングハートをポケットへしまう。

「詳しいことは、ユーノくんに聞いてね。そろそろ連絡あると思うから」

なのはは、その言葉に首を傾げた。何を言ってるんだ、この子は。そろそろ連絡があるなんて、そんな訳ないだろうと。

こんな時の連絡手段として、まず浮かぶのは電話。なのはは小学校3年生にして、携帯電話を持っているが、さすがに学校にまで持ち込んでいないし、家庭用の電話で学校に直接かけてくるとも考え辛い。それに、根本的のことを言ってしまえば、ユーノはフェレットだ。なのはには、フェレットが電話をかける姿を想像することができなかった。
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