innocent starter
□Act.1-1
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時は移り、授業の合間にある小休憩。
瑞希は授業終了の鐘と共に自分の教室を抜け出し、高町なのはのいるであろう教室にいた。とは言っても中には入れず、入口の辺りでウロウロしているだけなのだが。
困った表情を浮かべる瑞希の手には先ほどの教科書。結局、良心が抵抗に打ち勝ち持ってきてしまったらしい。
「えっと……」
持ってきたまではよかった。問題はそこから先。小学3年生にとって、ほかのクラスに足を踏み入れるのは至難のこと。別段、仲のいい友達がいる訳でもないし、知り合いもいない。
「う〜ん」
何度か中を覗いたが、高町なのはの顔を知らない瑞希はどうすることもできなかった。
「ちょっとアンタッ!」
突然の怒鳴り声に、瑞希はびくっと肩をふるわせる。
「さっきからなんなのよっ!」
腰まで届くブロンドの髪を靡かせ、勝気な少女、アリサ・バニングスは瑞希に言った。
「ちょ、ちょっとアリサちゃん」
そんなアリサを止めに入ったのはやはり、長髪の少女。アリサとは正反対な性格を持つ少女は月村すずか。
「え、あの……」
戸惑う瑞希。いきなり知らない女子に怒鳴られたのだ。無理もなかった。