innocent starter

□Act.1-2
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「先生、これってフェレットですよね?」

ベッドの上の彼を覗き込んでいたアリサが不意に言う。

「どこかのペットなんでしょうか?」

その質問の答えに全員興味があったのか、視線は一カ所に集中。合計、8つの幼い瞳が院長を捉えた。

「フェレット、なのかな?」

院長は少し悩むような仕種をしたあと、そう言った。

「違うんですか?」

すずかが言葉を発する。彼女達はとしてはどちらかと言えば後者の質問がメインだったのだが、前者で引っ掛かってしまったのだ。疑問に思ってしまうのも無理はない。

「この子は変わった種類だから、なんとも言えないんだけど。それに……」

院長は彼の首にぶら下げられている赤い球体に手を伸ばす。

「あっ……」

言葉をもらした院長は手を引っ込めた。彼女の指先が球体に触れるか触れないかのところで、彼が目を覚ましたからだ。

首を持ち上げ、右に左にと様々な方向に視線を向ける彼は何かを探していた。そして、その小さな瞳はある一点を捉えた時点で動きを止める。

「なのは、見られてる」

アリサに小声で指摘され、なのはは彼と目を合わせた。小さい瞳と幼い瞳。視線を交差させるのは2度目だった。しかし、先程とは違う。しっかりと意志を持った小さな瞳に、幼い瞳は若干戸惑う。どうして良いのかわからなかったのだろう、幼い瞳は瑞希を映した。

「大丈夫だよ」

ただ一言、瑞希は言った。何が大丈夫なのか、何を根拠に言っているのか、なのはにはさっぱり解らない。しかし、それでも先程よりかは大分違う。心のどこかで抱いていた恐怖心や警戒心、不安な気持ちは拭い去られていた。

ゆっくりと、怖ず怖ずとだが彼に向け差し出される手。

指先に彼の鼻がちらつく。そして、次の瞬間にはペロリとその指先を一舐め。それは、彼からの信頼の証だった。
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