いただきもの
□酒と海と友情と
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PM10:45。プロイセンはスペイン、フランスとの待ち合わせ場所である駅に来ていた。
だがしかしいくら待っても二人はやって来ない。
プロイセンはひとつ舌打ちをして、腕を組み直した。
悪友、と周りから呼ばれる三人は久しぶりに会う約束をしたのだった。
昔はよく三人で周りの国に迷惑をかけまくっていたのだが(オーストリアが一番の被害者、かもしれない)、ここ最近はそれぞれが忙しく、また戦争もあまりないので三人が集まる機会が無かった。顔を合わせるといえば会議程度なのだが、何分遊びではないのでろくに挨拶もできなかったのだ。
だが先日の会議でできた僅かな休憩時間にスペインの提案で久しぶりに会うことが決まったのであった。
久し振りに仲間に会えると思ってプロイセンは少なからず気分が向上していた。
だから集合時間の10分前には場所に来たし、たくさんのビールも持ってきたのだ。
たとえ集合場所がスペインとフランスの間あたりの駅であって、車の準備を押し付けられていても、だ。
しかし言い出しっぺが遅れるとは何事か!
PM11:00、プロイセンがいらつきで頭をひとかきし再度腕を組み直したその時、遠くから二人の声が聞こえたのだった。
「プーちゃんごめんなぁ〜」
「お前ら反省してねぇだろ!」
「やだなぁお兄さんは反省しすぎて泣きそうだよ」
「うるせー!おせぇんだ馬鹿!」
拗ねるプロイセンを二人は(反省してない様子で)宥め車に押し込んだ。(もちろん運転席だ!自らは後部座席であるが)
「うわプーちゃん、すごいビールだね」
「あったりまえだ!ビールは旨いもんな」
「いただき〜」
「あ、こら勝手に飲むな!」
「なぁ音量あげて〜」
「シカトすんな!」
スペインが持ってきたCDの、軽快なラテン音楽が車内に響く。
口ではぎゃぁぎゃぁと言い合いながらも、プロイセンは内心とても喜んでいた。
あぁ、やっぱりこいつら最高だ!
PM11:35。三人が車で向かった先は、海岸だった。
三月という季節、また時間も時間なので人はほとんどいる訳もない。
三人は自前の酒類を車から下ろし、海を眺めた。
「あー夜の海って綺麗だねー」
「せやなー、ロマにも見せたいわ〜」
((親馬鹿…))
プシュ、と缶ビールのプルタブをこじ開けて、プロイセンは自慢の酒を堪能した。
旨い。
ふう、と一息つく。
やっぱこいつらいいダチだぜ、と考えていたプロイセンに、「とりゃっ」と言う声と共に衝撃が来た。
「ぎゃぁあああぁ!」
ばしゃーん、とまぁ清々しい水音。
前言撤回、すっげぇむかつく!
スペインは何を思ったか、プロイセンへと綺麗なタックルをかまし、自身もろとも海へと落ちたのだ(どうせ酒の勢いだろう。そいえば車内で浴びるように酒飲んでたな)。
「あはは、プーびしょびしょ〜」
「てめ、誰のせいだと思ってんだ!」
尻餅をついた体が海に半分埋まった状態でスペインはふそそそそ〜といつものをやって、笑う。
「あらら、二人ともガキじゃあるまいんだし」
危険を一人回避したフランスがあたかも偉人の様に言うのに、プロイセンとスペインは顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
そして、
「だあああぁぁぁあ!」
「うりゃぁぁぁぁい!」
と奇声を発しながらフランスへ目掛けて走り、叫ぶフランスを海へと投げた。
「「っしゃぁぁぁぁぁ!」」
二人はぱちんと手を叩いて喜び合い、海水にむせ返るフランスを見下ろした。
「プー、ナイスやったなぁ!」
「おめぇもな!」
互いの肩をたたき合い、喜びを分かち合っていると、僅かながらも殺気を感じ取った。
「プー、スペイン、」
ゆらり、フランスがびしょびしょになりながらも立ち上がる。
「遊びはほどほどにね…?」
上等だコラ!やってやろー!
と雄叫びが響き、プロイセン達三人は真夜中の海で暴れまくった。
ああ、やっぱり、ほんとにやっぱりこいつら最高だぜ!
酒と海と友情と
(PM11:59、潮風が気持ちいい)
fin