山獄

□“雪”も“今”も、積もれば綺麗な……
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「あ……」
「おー!」








「雪だ!!」










今日もまた、山本は二人前の寿司を持って獄寺のマンションに来ている。



「すげ……あん時の雪合戦以来だな」
「イタリアって降る?」
「すげェ降る………っつかそんなのも知らねーのか!?ちったあヨーロッパのことぐらい勉強しとけ!」
「悪ィなー、あいにく俺は野球しかできないんで」

白い歯を見せながら笑う山本を横目に、獄寺は更に勢いを増しながら降り続ける雪を目で追う。

しばらく2人で黙って雪を見ていると、獄寺が飽きてしまったのか、口を開いた。

「なあ山本」
「んー?」
「外……行かねぇ?」

照れているのか、少し頬を赤く染めた表情を見て、嬉しくなった山本は即座に「おう!いいぜ!」と元気良く返事を返す。

「でも行く前に寿司食わせろ」
「あ……そうだな、食っちゃわないと腐るな」

と山本が言うと、相当寿司が食べたかったのか腹が空いていたのか、獄寺が窓辺から離れて勢い良くソファーに座り、山本の分など気にせずにガツガツと寿司を口に放り込み始める。
その様子を、リビングに面したキッチンに行きコップにお茶を注ぎながら見ていた山本は、思わず顔がにやけてしまっている。

「ハハ……やべー、獄寺ちょーかわ……」
「いいからテメーも早く食え!」

更に顔を赤くしながら獄寺が投げた山本の分の割り箸は、キッチンのカウンターを突っ切っていったが、標的である山本の体に当たる前にその手によって掴まれてしまった。

「ったく……瞬発力ありすぎなんだよ」
「まぁな!よし、んじゃ、俺もいっただきまーす!」





















「あー……うまかった」
「獄寺が喜んでくれるとすげー嬉しい」
「………早く行くぞ」

終始耳まで赤くほてった獄寺は、厚着をするために自室へ入ってしまった。
山本は、リビングの隅にある自分のエナメルの上に置いてあった厚手のジャンバーを着て、了解を得ることもなく獄寺の自室のドアを開けた。

「獄寺……」
「んなァッ!!!勝手に開けんな馬鹿!!」
「だって遅いんだもん」
「急に口調変えんな!」
「はーい」

ニコニコしながら山本がベットに座ると、獄寺は急いで厚着に着替え始める。その間にも、雪は勢力を増していった。






「よし!んじゃ行こーぜ!」
「おう」

獄寺の用意が終わると、2人はマンションを出て雪の世界へと足を踏み入れた。



「す………すげェ!!」
「降りすぎじゃねーか!?前が見えないのなー獄寺ぁー!」

と言いながら山本がどさくさに紛れて獄寺の手を握る。

「なッ!何すんだよ!誰かに見られてたらどうすんだよ!!」
「別にいいじゃん!こーしてるほうが暖かいしな!」

確かに………と内心思ってしまった獄寺は、黙ってその手を繋いだままにしておくことにした。

「……神社行こうぜ」
「おっ、行くか!」

そして、2人は相変わらず手をしっかり繋いだまま、マンションの駐車場を出て神社へ向かっていった。

 
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