山獄

□雪
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「みんなー!雪だぜ雪!」

授業中にも関わらず、クラスの男子が騒ぎだすと、一斉に教室が騒つき始めた。

「雪なんて久々だな〜!」
「そうっすね!」

ツナの言葉にニコニコと威勢のいい返事をする獄寺。

───と、

(なんだよ山本…!)

前方の席から獄寺に視線を送り続ける山本に、獄寺は不覚にも顔を赤らめる。

「獄寺くん?顔赤いけど具合悪いの?」
「えっ!いやっ、俺は元気っすよ!」
「ならいいけど…」

明らかに様子がおかしい獄寺にツナは一瞬どうしたのか悩んだが、ふと教室内を見渡したとき、こちらを見ている山本と目が合った。
なるほどね…と納得したツナは、黒板に向き直った。

そしてそれからすぐに、また授業が再開されたが、獄寺の心拍は上昇するばかりだった。

(野球馬鹿め…あとで問いただしてやる!)











放課後、人の数がまばらになった教室。獄寺はズンズンと席についたままの山本に歩み寄った。

「おい山本」
「ん?」

荷物をまとめていた山本が顔をあげてニコッとした。
途端に顔が赤くなる獄寺。

「あっあとで部活終わったらすぐに教室に来い!」

そう言って自分の席に戻ろうとした獄寺の腕を、山本が掴んだ。

「今日雪がすごいから早く帰れってんで部活が休みになったんだ、だから帰ろうぜ」
「お、おう」

なんだ部活無いのか、と内心で呟いた獄寺は、机に乗っているスクールカバンを取ると山本と一緒に教室を出た。



「で、山本」
「んー?」

人通りの無い道を、寒い寒いと言いながら歩を進める。

「なんであんとき俺のこと見てたんだよ」
「あのときって?」
「国語の授業中雪が降ってきてみんなが騒いでたとき」

右手人差し指で顎をポリポリ掻きながら考える素振りをした山本は、「ああ、あのときな!」と言って左を歩く獄寺を見た。

「あれはフツーに、ツナと喋ってる獄寺が可愛かったからなのなーっ」
「はあ!?」

眉間にシワを寄せて睨み付ける獄寺の髪を、ぐしゃっと撫でた。

「あとは、獄寺の髪の毛が雪みたいにキレイだから」

獄寺は何も返せなかった。恥ずかしさと照れから何も言えなくなってしまったのだ。
そして、優しく笑う山本がとても輝いて見えた。

「獄寺、チューしていい?」
「…勝手にしろ」
「えっ!?」

いつもなら「外でするなっつーの!」と断るはずの獄寺がOKしてくれたことに、今度は山本が驚いた。

「…なんだよしねぇなら最初から言うなアホ」
「ううん、する」

そう言って立ち止まると、山本は少し腰を曲げて獄寺にキスをした。

「獄寺、好き」
「わかってる」

照れ臭そうに視線を反らした獄寺が可愛くて、肩を寄せてぎゅっと抱き締めた。


「俺も好き」


小さく耳元でささやかれたその言葉を、山本はしっかりと拾っていた。



(また来年も再来年も、ずっとこいつと雪が見れますように───)






fin

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