FINALFANTASYXI〜MEMORY OF TIME

□第二章
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「ヴェインは歩くのが早いですねぇ」
「そりゃあんな人だし……当然て言えば当然なんじゃないか?」


すっかり「ヴェイン」と呼ぶのが定着した彼女。
パーティに入ったのか、入ってないのか分からないけど、取り敢えず「彼女のパーティ」と合流するらしい。


ふと、立ち止まったヴェインが誰かと話している。
ちらっと見えたのは、タルタル族とヒューム族の人達。

あれが彼女のパーティだろうか?


「なぁ」


唐突に話しかけられた。本日二度目だ。
一体、何なんだよもう。


「アンタ、冒険者だろ?」
「そうだけど……」


話しかけて来たのは金髪の青年だった。
長い髪を少しだけ上でまとめ、後は降ろしている。
最初は女か、と思ったが違う。
声が低音だし。


「へぇ、赤魔道士か!
こりゃいいや、なぁ、ちょっとだけオイラの事連れ出してくんねぇ?ヤボ用があってさ」
「何の?」
「あー、ちょっとしたことでさ。ほら、そこのヴェインのパーティに居るんだけど。
親父が厳しくてな、うん」
「ふーん……?」

青年が指さした先には、雑談を繰り広げるヴェインの姿がある。


「だからさ、ちょっと頼まれてくんない?
お安い御用だろ、赤魔道士君」


なん、だと?


「君、ですって……?」


声が思いっきり低くなった。
ダグラスがびっくりした顔でアスレイを見る。
それから「バカやったな」と言う顔になって慌て始めた。


「ですって?……ちょと待て。お前、まさか……」


青年の顔に焦りが出る。


女ァァ――――――――――――――――――――ッ!?
だぁれが男だぁぁぁぁぁぁッ!!


どごべきっ!と鈍い音を立てて青年が吹っ飛ばされる。
がらがらどっしゃん、と派手な音を立てて道に並んでいた工芸品をぶっ壊す。


「う、嘘だ!
こんな乱暴な女居る訳ない、うん!絶対言える!」
「うっさいわね!」


ぐぃっと思いっきり耳を引っ張った。
「いぃ、でででっ!」と悲鳴を上げる。


耳を擦りながら立ち上がると「すまん!」と謝って来た。
「え、あ、ごめん」とこっちも返すが何となく微妙な空気が二人の間に流れる。



「あ」


妙に間抜けな声が聞こえた。何か、と思って隣りを見た瞬間、リヒターが吹っ飛んだ!


「ぐぇっ!?」
くぉんのバカ息子がぁっ!!


派手な音を立てて、再び吹っ飛ばされていた。
アスレイが目を瞬かせる。誰だコイツって顔して。


「はっ!?
ああ、息子よ!私はなんて事を―――」


アスレイの目付きが変わっていく。
なんだお前って顔になってる。



「ってぇ……、おい親父ぃ!
てんめぇ、いきなり何しやがる!?」
「ああ、息子よ!大丈夫か!?」
「……一遍死んでこいっ!!」


飛び出て来た男はどうやら青年の父親らしい。確かに顔が似てる。
只なんと言うか、この親子、どちらも「芸術まっしぐらです」と言う顔をしている。


「何なんだコイツら……」


ぽつん、とダグが呟いた。


「……世界は変人で溢れてる。これぐらい序の口でしょ……多分」
「変人奇人で溢れてたらこの世界は終わってるから」

冷静なツッコミで突っ込むが、アスレイには効いてない。



「彼はリヒター。リヒター・ハルニッシュだ。騒がしい奴だと思うがこれから頼むよ」
「はい……?」


悪い予感は的中する。


ヴェインは何かを隠してる。
けれどそれを、笑顔で包んで消す。


殴られた頬を擦りながら叫ぶリヒターのガントレットが、やけに目に付いた。
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