FINALFANTASYXI〜MEMORY OF TIME

□第六章
3ページ/3ページ

「うかつに追わない方が良いよ。
下手すれば殺される」



「イタチが俺たちを殺すなんて、あり得ないだろ!?」



「君さ、少しは冷静になりなよ。
この中で彼とまともに殺り合えるのは、少なくとも僕とヴェインぐらい」


「……だな。私達位しか、相手にならんだろう。
なんたって<伝説の忍>が相手だしな」

「………伝説の、忍?」


ダグラスは眉を潜める。
あのイタチが?



「何だ、知らないのか?東方でイタチは有名だぞ?
伝説のくの一、ユウと並ぶ忍で」
「そんなの……」



そんなの一言も教えてくんなかったじゃんか。


「ああ、悪い。本人から口止めされてたんだ」



本当かよ。
つい半眼になるダグラス。


「……彼の行き先は恐らくエルディーム古墳だろうね」
「エルディーム古墳?何で、そんな所に………?」
「………エルディーム古墳の最奥には、甦りの祭壇と言うのがある。
彼はそこに向かったんだろう」



目の前のアスレイはアスレイであってアスレイじゃない。
誰か別の人間が憑依しているのだ。
その証拠に、本来黒い筈の目が、蒼く変色している。



それに、アスレイはあんなに博識じゃない。



「彼は誰かに甦りの祭壇の場所を聞いたんだ」


目の前のアスレイはアスレイであってアスレイじゃない。



「アンタ……一体誰だ?」
「……嫌ね、私はアスレイ・グラントよ。姉の顔を忘れたの?」



間抜けなダグラス、と呟いてから、ダグラスとリンを睨み付けた、気がした。
そしてそのまま口が動き、「いつまでも甘えてんじゃないわよ」と。
一瞬物凄くおっかない顔で呟いたのだ。


確かにリンは最近俺にべったり……だと思う。
それが気に入らなかったのだろうか。



「ま、気にするな。女ってのはああ言うもんだ、うん。
時間が立てば元に戻るって。………多分」



オイラだって幾つあの女の怒りを買ったか、分かんねー。とリヒターが呟き、ヴェインに鋭く睨まれる。



「リヒター………、アンタ、飯抜き」
「えー―ー―ー―ーッ!?」



リヒターの絶叫が森に響く。
だが、そんなのお構い無しに調理を進めるヴェイン。


辺りは夜の闇に包まれながら、暗くなりつつあった。


彼らを別の闇が包もうとしてるのに最初から気づいていたヴェインは微かな笑みを唇に浮かべるだけ。
アスレイの中の誰かがアスレイの体を借りて密かに、笑った事すらも。



そんなの知るよしもなく。


ダグラス達は深い眠りについた。




月の光だけが辺りを照らし、物音一切しない森に一つだけ物音が響いた。


パチン、と何かが開く音だ。



首からかけたペンダントの中には一枚の写真。



彼女によく似た顔立ちの銀髪の少年と茶髪の女性と、緑依の青年。


「……どんなにあいつから愛されようと……」


そう、どんなに愛されようとも、私の心は揺るがない。
アイツが自分に寄せる好意は、痛いほど分かる。




―――――あん時、アイツに助けられなきゃよかった。



内心、毒づいていると、誰か近付いてきた。


ペンダントをそっとしまい、振り返る。


近付いてきたのは、金髪碧眼の子供だった。


「ヴァルド………!………いや、エルドナーシュ?」



少年と弟の面影が重なってしまい、つい少年を弟の名で呼んでしまった。
少年と弟は似てる。
名前と言い、殆ど似てる。


「そのヴァルドって誰さ?」

「………私の弟よ」
「………弟ぉ?」

「そう。アンタに少し似てるわ。
小生意気なとこといい、お人好しなとこといい、シスコンなところといい………」
「………ちょっと待ってよ。
僕、小生意気でもなければ、お人好しでもないし、シスコンでもないんだけど。
その前にさ、褒めてるのか貶してるのか、どっちかにしてよね」


エルドナーシュが眉を潜めつつ、隣に座る。



そういう所も似てる。



『姉上』



まだ幼さが残る笑顔で自分を呼んでくれた弟は、もう子供じゃない。


『遊ぼう』


別れた時はあどけなさが残っていたけど、再会した時は国民を率いる立派な皇子として、私なんかよりも十分大人だ。


『姉上がご留守の間、務めは果たして参りました』


「……丁寧さだけ、アンタと違うわ」
「丁寧なんて、僕には出来ないよ」
「でしょうね」
「………ちょっと、真っ向から認めないでよ」
「そう言う皮肉屋な所もね」
「……そこだけは君譲りだと思うんけど」
「……そうかもね」

少年と弟は似てる。

少年には兄弟がいて。
皆それぞれ家族がいる。
私だけ独り。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ