FINALFANTASYXI〜MEMORY OF TIME

□第二章
1ページ/2ページ

不思議な奴だ。


後ろ方聞こえる喧騒の中にわずかに混じる、先程出逢った少女らの声を聞きながらヴェインは独りごちる。


「・・・因果、なんだろうな」


いや、考えると自分そのものが因果かもしれない。


「もし・・・あの子がそうだったら・・・」


行き当たりばったりな策を作った自分が恨めしい。
まさか、「こんな所」で会うだなんて思わなかった。


「見つからなければ良いが……」


もっとも私が危惧しているあいつに。
あいつに見つかったら、この策も水の泡だ。


「あぁ、ペタ」
「おそぉい」
「ごめん」


待ち合わせをしていたカフェでパーティの仲間であるタルタル族の女性をやっと見つける。
予想通り、ちょっとだけむくれていた。


「遅いよぉ。どんだけ待ったと思ってんの」
「ちょっと、ね。人を探してた」
「人ぉ?」

珍しいと言いたげな視線でじろじろとペタがヴェインを見る。


「何か成果はあったのか?」


静かな声で問いかけて来たのはヴェインと1、2位を争う「静かすぎる奴」だった。


「そっちは?」
「何も。獣人達が最近活発になっている、と言う事だけだ」
「そう………」

どこも同じか。


「………厄介なものを連れて来たな」
「は?」
「後ろの、あれだ」


青年――イタチが視線で示した方を見る。


吹っ飛ばされる青年と、吹っ飛ばした少女と。
口を半開きにしたまま固まってる二人組と。


「………リヒターってば、久しぶりにあったらまたなんかやったらしくて」
「………また?」
「うん。造形師としての腕は一流のクセに、要領が悪いんだよね、アイツ」


ヴェインを憐みの視線をふっ飛ばされた青年、リヒターに向ける。


「まさか、また………」
「多分ね。あれでも冒険者だからさ、大人しくしてるのは堪えるんじゃない?」
「ふぅん………」


リヒターとは以前、LSで組んで色んな場所に行った事がある。
その時からヴェイン、ペタ、イタチのパーティだったのだが彼の様な火力特化型は居なかった為、かなり戦闘が楽になった。
ハイレベルノートリアスモンスターを狩る際には彼が必要で、何度もパーティを組んだものだ。

彼がサンドリアに居を構える有名な細工師の息子だと知った時は少しばかり驚いた。
まぁ、手先が器用(過ぎた)だったから何となく予想は付いていたが。


「リヒターのお父さんって革、骨細工から調理、裁縫、彫金、錬金術辺りまで得意なんでしょ?
そりゃあ、厳しいよねぇ、多分」
「結構親バカだったと聞くが」
「父子家庭だしねぇ」

母親は病で他界したと聞く。


「クラウスはどうみても生易しい奴だろう。あれは殴っても力加減はちゃんとできてるんじゃ………」


言ったとたん、さらにリヒターが吹っ飛ばされた。


「………ほら、ね?」

何がほらね、なんだと言いたい。


「あのお父さん、かなり手加減してやってるんだよ。でもクラウスってナイフより重いもの持った事なさそうだからねぇ。
実際の力は結構弱いかもよ?」


それはどうだろうか。
まぁ、少女が殴った時よりは軽そうではあるが………。


「・・・リヒターはなんて言ってたんだ?」
「また、一緒に冒険に出られないかって」
「何故?」
「弟を探すらしいよ。生まれた時に獣人によって攫われちゃったんだって。
クラウスさんとメリルさんは昔からいろんな所に行ってたらしいから、弟君が生まれた所もアトルガン辺りなんだって」


ああ・・・と適当に相槌を打つ。
アトルガンは東方と争いを続けている。
皇国自体は否定しているが、アトルガンは獣人と手を組んで東方と戦っていると言う噂も少なからず聞く。

もし彼の弟がどちらかの国所属だと誤解されてしまったのなら納得は行く。


「助けに行かなかったのか?」
「行ったらしいんだけど、どっちの国にもいなかったんだって。
だからもしかしたら、弟君も手掛かり探してこっちに来てるかもしれないんだってさ」
「そんな根拠もない話をアイツは信じたのか?」
「……クラウスさんが、そう言う噂を聞いたんだって。
リヒターとクラウスさんによく似た冒険者がいるらしいよ。吟遊詩人の人とパーティ組んでるって」


デマか、それとも偶然か。
リヒターとクラウスは金髪碧眼でどちらも似通った顔をしている。
もし、あの二人に似ている冒険者が居るのならすぐ噂になる筈だ。


冒険者はフロンティアを好む。
見知らぬ土地があればそこへ行って、情報を得る。
そう言う経緯を考えれば噂があってもおかしくはないのだが。


「クラウスさんはここから離れられないからリヒターが行くんだって」
「………」
「負い目を感じているのだろうな。幼かったとはいえ、守れなかったという自責の念がアイツを責め続けているんだろう」

静かに低く、イタチが言う。


「あの明るいバカでも悩む事があるんだな」
「そりゃー人間だからねぇ。アンタみたいに、感情が無い人間だとは限らない訳でぇ」
「失礼な。私にも感情ぐらいある。………ない、に等しいかもしれないけど」


目を伏せたヴェインを見て、ペタがあっと言う顔をする。

「ご、ごめん」
「……平気だ。昔から、だからな」


無理に笑ってみせるが、作り笑いだと言う事はすぐに分かっただろう。



振り返れば、リヒターに対して少女・・アスレイが駆け寄ってケアルをかける所だった。
2度も殴られれば「痛い」では済まないだろう。
―――痛い、で済めばましか。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ