FINALFANTASYXI〜MEMORY OF TIME

□第六章
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「あの………裏切り……者……シアネ……」


ぎょっとした感じで、ダグラス達が振りかえる。
ヴェインはチェストの鍵(倒したオークが持っていたらしい)を無言で数えていた。

「起きたの?」

赤毛の少女が呟く。

誰だかわからなくて、首を傾げているとヴェインが近づき、瞳を覗き込んだ。

真っ黒な瞳の中にある邪悪な蒼。
間違いない、あの少年のものだ。

そして………さっきのあの言葉。
(不完全だけど………奴に乗っ取られてる)

「………カザムに逃げるよ」

アスレイが小声だけどあの少年のフレーズで喋る。

「カザムに逃げて、この子の感情を爆発させる。
そうすれば、彼女は僕らの仲間だ」


にたり、とアスレイの中の少年が笑った。


「この服もさぁ、センスないよね。やっぱり彼女には緑が似合う。緑が。
あーぁ、いまの人間って全く持ってナンセンス」


待て、その年でお前どこでそんな言葉覚えた。
いや、コイツ結構永く生きてっからそんな言葉覚えてて当然か。


「アイツから教わった」
「アイツ?カムラナートの事か。
………全く、ロクな事教えない………。
あのウスラボケめ」


さっきのは心を読んで分かったらしい。



「………アイツに愛想つかれるよ」
「あんな無愛想で根性無し、こっちから願い下げだ」
「………全く猛々しい上に口が悪すぎ……そんなんじゃ何時まで経っても嫁に行けない……」
「余計なお世話だ!!」


大声を出したヴェインを驚いて皆が見る。

「な、ななななななな何でもない。何でもないったら。
あは、あははははは」


明らかに挙動不審なヴェイン。

そのままアスレイに小声で、


「あの娘の魂はどうした?」


ヴェインはこう聞いてるのだ。
アスレイの魂をどこにやった、と。


「………そんな怖い顔しないでよね、全く。言わずとも分かってるだろ?
あの娘はあれのショックで昏睡状態。
お陰様で僕を押さえてる力が緩み、こうして表面に出てられるのさ」


あの少年を押さえてられるぐらいの力……。
もしかしたら彼女はまさか<あれ>……。


「アスレイはもしかしたらまさか<あれ>か?」
「うん、そうみたいだね。人より聴力、視覚が優れてるみたいだし。
それに昔、暴走しかけた事があるみたいだよ。<あれ>の宿命からは逃れられないからね。
僕がこのまま完全に身体を乗っ取ってもよかったんだけど、それじゃつまんないし」


つまり彼はこう言ってるのだ。

この娘の身体は一時的に自分が乗っ取った、と。
この娘の精神は既に汚染した、と。


エーレンが聞いたら怒り狂うだろう。
彼女の事を、実の妹のように可愛がっていた彼だから。


「もう手遅れだよ」
「………何が?」
「エーレンがかけた呪いは解いた。複雑な術式だったけどね。
後は彼女にあの石を埋め込んで、僕の思い通りに操るだけさ」
「………!」
「君もあの石を使ってるなら、逆に操られないよう気を付けなよ」


つまり彼は、石の魔力に気を付けろ、と。
石の扱い方は知ってる。
一歩間違えたら、石に操られ、自我を無くし、人ではなくなるだろう。

リディアがそうだったように。


彼女は生まれながら女王としての気質を持っていたし、誰よりも強かった。


それでも力を求め――――人でなくなってしまった。


暴走したリディアは娘の手によって止められたが、娘を見ても自我が完全には戻らなかった。


そうなりたくなければ、リディアの様になりたくなければ、石の扱いには十分気を付けろ、と言う事だろう。


辺りは夕暮れになりつつあった。

後数時間で日が登り、完全に日が暮れるだろう。


そうなる前にここか出ないと。
このロンフォールから。


「早く出発しよう」
「えー、飯はー?」


ルミネがごねる。


ダグラスも「そろそろ腹減ったな」とか言ってこっちを見る。

――――私に料理作れってか!

言っとくが、ヴェインは料理が得意な訳ではない。
一度作って大公を卒倒させた程だ。
それから何故か味見(つまみ食いと言った方が正しい)に来るが、感想は「上手い」だけだ。
――――本見ながらやってから腕が少し上達したかな?


「そんなに食べたかったら自分で獲物捕ってこい」
「いじわ………」
「分かりました、捕ってきます」


リンがそう言い、ルミネとウーフィをずるずると引っ張って行く。


ボケッとして居る男連中共。


「ボケッとしてないで、さっさと行って来い!」


怒鳴り散らすと蜘蛛の子を散らした様に散り散りになった。

「……ったく、使えん奴等だな、ホントに……」



「あぁ、恐ろしい………」


ぽつり、とアスレイが言い、ヴェインに睨まれた時。



それは聞こえた。
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