過去拍手文

□POCHI
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コンコン




「ポチー、ドア開けてくれ」



両手の塞がった俺はポチに助けを求めた。
すると奥から足音が聞こえた。



『りょー、ご飯』

「わーってるって(笑)」

『あ、ニンジン・・・・・・嫌い』

「好き嫌い言ってんな」



部屋に置かれた小さなテーブル。
その上に並ぶオカズの数々。


箸の使えないポチはスプーンとフォーク。
そのフォークで、ハンバーグに添えられたニンジンを避ける。



『りょー、ニンジン食べる。かわり、コーン食べる』



そう言い、ポチは自分の皿のニンジンを俺の元に寄こした。
代わりに俺の皿のコーンを自分の皿に置いた。



「お前は馬鹿か」

『む・・・・バカ違う、りょーバカ』

「俺が馬鹿ってか!!」



うんうん頷きながら、ハンバーグをほうばる。
幸せそうな顔に思わず笑みが零れた。



『りょー、オイシイね』

「・・・あぁ」

『きょーくん、心配・・・・してた?』

「母さんも残念がってたぜ」



その言葉に、また"むっ"と唸る。
少し考えた後袋を見つけた。



『コレ、なに?』

「あぁーなんか兄貴がポチにってさ」

『む?・・・・玉・・・・綺麗』



兄貴がポチに寄こしたのはビー玉だった。
ビー玉を知らないのか、ポチは部屋の明かりにビー玉をかざし、心なし嬉しそうな顔をしていた。
どうやら気に入ったらしい。



「それ、ビー玉っつーんだぜ?」

『びーだま?』

「そっ、綺麗だろ?」

『びーだま、綺麗・・・りょー』

「あ?」



手でビー玉をコロコロ転がしながら、ポチは俺の名前を呼ぶ。
よっぽど気に入ったのか、笑顔で俺にすり寄ってきた。


こういうところが俺は猫だと思う。


なんて、思いつつ俺は返事をした。
ポチは一層笑みを深くし、また口を開いた。



『きょーくんにお礼、言う』

「兄貴にか。そりゃいい、きっと喜ぶぜ?」

『びーだま、綺麗。好き』

「なら、明日の朝一緒に飯食ってやれよ」



それだけで兄貴は満足するぜ?


そう続けて言えば、コクンと頷くポチ。
頭を撫で、褒めてやるとポチは喉をゴロゴロ鳴らす。
ホントに猫みてーな奴。



『りょー』



俺の名前を呼ぶコイツは人間で、なのに猫で。
オマケに名前はポチ。
知ってるのはそれだけだけど、当分はそれでもいいのかもしれねぇ。



「さっ、風呂入んぞ」

『水、嫌い』

「我が侭言ってんな」

『りょーばか』

「ばか言うな」



だから、もう少し馴染んだら。
俺はお前に聞こうと思う。



『連れてって』

「仕方ねぇ奴」

『ふふっ』



ポチ、お前の名前は何なんだ?
その時は答えてくれよな。


お前だって、宍戸家の家族なんだからさ。



END



11月の拍手で、続き物です。
ちなみに"きょー"と呼ばれるのは亮ちゃんの兄で"享"です。
主人公は人間だけど猫で、名前はポチ☆


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