彼女の歌は、至上の音楽だと思う。
「旨いんだね」
俺が声をかけると歌声が止んだ。
そんな彼女の元へ、拍手をしながら近づく。
『お、鳳君・・・聞いてたの?』
驚いて、照れたように微笑む。
それから持っていた譜面をパタンと閉じた。
「監督が惚れこんでるくらいだから旨いんだろうな、って思ってたんだけど想像以上だね」
『榊先生が惚れっ!?えぇ!?』
顔を真っ赤にしながら、そんなことないよ、って首を振る。
その姿が可愛らしくて思わず、俺はクスリと笑った。
彼女の声は風みたい。
透明で、純粋で、濁った心を綺麗にしてくれる、そんなような。
「歌、また聞かせてもらえる?」
ハニカムように笑って、彼女は頷いた。
風になびくこげ茶の髪を一掬いして、そっと口付ける。
「できれば、キミの歌声は誰にも聞かせないで欲しいな」
ギョッと驚く彼女に、俺は今までで一番笑って、それから言った。
僕だけのメロディ
END
(屋上には二人だけ。彼女の歌を聞けるのはこれからもずっと―…)
2月の拍手でした。
チョタお相手!
同級生設定だったり。