夜の闇と月の光
□My mother will be visited, and, fox story
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ある晴れた日の昼下がり。
風は穏やかで、陽射しも柔らかく、絶好の昼寝日和。
アカデミー生はみんな授業中の時間。
シカマルはガマン出来ずに教室を抜け出し、アカデミー裏の森で昼寝に勤むことにした。
ちょうど良い木陰を探してヒョコヒョコとさ迷い、適当な場所を物色する。
ゴロンと寝転がり、其処の日当たり具合を確かめ、ご機嫌で瞼を閉じる。
額を撫でる風が気持ち良い。
ユルユルとまどろみに身を投じて――――。
フ、
と覚醒した。
自分でも何故、目が覚めたのか、良く分からない。
だが、
(……血のにおい?)
微かにした、ような気がしたのだが。
………………。
(気のせいか…?)
今は感じない。
首を捻りつつ、気を取り直してもう一度眠りに落ちようと目を閉じ――、開けた。
自分が枕にしていた樹の梢高く、何か光った。
今は夏。
緑の葉に陽がキラキラと金色に反射する。
それに紛れていたが、違う。
何か―――いる。
ふ、と風が止んだ。
ブツン。
何か…千切れる、音?
バサバサ、ザザザザザァ――。
ドスンッッ!!
「ぐえっ!」
降って来たのは、傷だらけの金色の仔狐だった。
A
「ぐふっっ…」
物凄い衝撃を腹に感じて、思わずうめいた。
瞬間つむってしまった目をなんとか開けながら、詰まった息をそろそろと整える。
「な、ゲフッ、なんだぁ…?」
腹に乗っていたのは、金色の、小さな狐。
その柔らかそうな金の毛並はしかし、今は全体的に土に汚れ、所々血がにじんでいる。
ぱっくりと開いた傷は、明らかに刃物によるものだ。
おまけにその後ろ足は綱でくくられ、その先は千切れた跡がある。
腹への衝撃の前に確かに聞いたブツンと言う音はこれだろう。
「狐の死骸…?」
しかしそっと触れてみると、まだその身体は暖かかった。弱々しいが脈もある。
開いた口からは舌がべろりと出ていたが、微かな息があった。
「…生きてる」
どうすっかな、呟いた。
シカマルは次の行動を決めかねて一瞬逡巡し、腰を上げた。
傷に触れないように気をつけて、上着で包み込む。
そしてアカデミーに背を向けて、そっと歩き出した。
木の葉の里で、狐は禁忌。