夜の闇と月の光

□揺るがぬ絆
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その日、ナルトは朝から様子がおかしかった。




毎朝カカシは遅刻し、胡散臭い言い訳にナルトとサクラがツッコむ。
サスケはまるきり好きな子イジメの典型でナルトに絡むし、わけがわからないナルトはサスケにつっかかる。
サクラはそんなサスケに呆れつつ、必死に自己アピール。

なんとも呆れた日常だが、これこそが平和な七班の有り様だ。

しかし今日、ナルトはどこか上の空だった。

いつもと同じようにカカシは遅刻で、サクラがグチればナルトが即座に相打ちをうって騒ぐのが常なのに、今日は受け答えがどこかちぐはぐだ。

サスケが絡んでも、一応
「ドベじゃないってばよー」
といつもと同じように返すがケンカにまで発展しない。

ようやくカカシがやって来ても、いつもサクラと揃う声が一拍遅れるし、カカシが言い訳を始めても「ふーん」と流してしまう。

どうにか任務を開始してもボーッとして、時折空を仰いではふっとため息をつく。

心配して訳を訊いても、キョトンとして
「別になんともないってばよ?」
といつもの顔で笑うばかり。

どうやら本人はいつも通りのつもりのようなのだ。


ナルトとサスケのケンカがない分、いつもより早く任務が終わった。

ギクシャクと帰路につく。

様子のおかしいナルトをチラチラ気にしつつ歩いていると、ナルトがピクッと何かに反応した。
パッと顔を上げて振り向くと、唐突に駆け出す。

「あっ」

「ナルト?!」

「どこ行くの?!」

三人、顔を見合わせて慌てて追いかけた。




一方、10班は今日はだだっ広い野原で落し物探しの任務だった。

草ボウボウの野っ原の中から、緑のリボンを探せ。というもので。
いつもより手間取り、地道な探索を続けて、さっきようやく任務終了したところだ。
帰りに焼肉でも食べて行くか、と話が決まって重い腰を上げた時。

「シカ〜〜〜〜!!!」

ナルトが駆け込んで来た。
勢いのままにシカマルの背中に飛び付く。

「ぅおあっ?!ナ、ナルトッ?!」

「シカマルッシカ〜久しぶり〜」

しっかり抱きついたまま、スリスリ摺り寄る。

「…ナルト…?久しぶり、だね…?」

「ナルトォ?アンタどっから来たのよ?」

「うずまき、か?―――七班も任務終わったのか?今日は早えぇな。
いや、うちが遅い…のか?」

突然やって来たナルトにびっくりしながら声をかけるが、まるで聞いていない。

「えへへ、シカシカだ〜

「ナルト?お前どうした?」

ぴったり張り付くナルト。
二人きりならともかく、人前で、ましてや下忍時にこんなにくっついて来るのは珍しい。
そもそもここまで走って来たその速さは、下忍の“ドベナルト”にしては速すぎる。
気配を探ると残りの七班は後を追って来ているのだろう。
大分後方ではあるが上忍カカシを先頭に、着実に近づいて来ている。
その距離等の事実からも、かろうじて瞬身は使わなかったようだが、とても“ドベ”の範疇には収まらない力を使ったのがわかる。

いぶかしく思って顔を覗き込もうと背中から正面に反転させると、嬉しそうに首に腕を巻き付かせて抱きついてくる。

「ナルト?おい?」

うにゃあん、ごろごろ。

ダメだ。まるでマタタビ貰った猫である。
これはもしかして臨界点に達したということだろうか。

実はこの二人、この一月ほど顔を合わせていなかった。

前半はナルトが影分身を置いて里外へ、後半はシカマルが解部にカンヅメになっていた為だ。
だが帰ってきてからもナルトは忙しく、解部のシカマルのところへ顔を見せる暇もなかった。

今朝方ようやくシカマルはお役ご免になり、久しぶりに影分身ではなく本体が下忍任務に顔を出したのだが。

「ナルト、お前ホントにどうしたんだ。
なにかあったのか?」

「んーん!久しぶりにシカに会えて嬉しいだけー

にこにこ笑って言うナルトはそりゃあ可愛い。

可愛いが大分タガが外れている気がした。
端から見ていたいのが、いぶかしげに言う。

「アンタたち、そんなに仲良かったっけ?」

「あー…」

内心めんどくせー!と叫んでいたが、なにか応えないといのは納得しないだろう。
なにか適当な返事はないかと模索していると、何故かチョウジが先に口を挟んだ。

「ナルトとシカマルはアカデミーの頃から仲良いよー(もしかしたらその前からかも知れないけど…)」

最後に小さく呟かれた言葉にギョッとする。

コイツもしかして気づいてんのか?

「あー、んじゃうずまき。これから焼肉食いに行くんだが、お前も来るか?」
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