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□DNA
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あの日の事を思い出し、ブルリと身体を震わせたジョットの背中を、アラウディがあやすようにポンポンと叩く。

「君が悪いわけじゃない」

アラウディの慰めの言葉がむしろ辛くて、ジョットはキュッと唇を噛む。
だって、自分の甘さの犠牲になったのはエレナだけではないのだ。
親友のコザァート率いるシモンファミリー。
彼らがどこか遠く、安住の地を求めて旅立ったのはほんの2週間前の話――。


あの運命の日からデイモンは人が変わってしまった。
元々「名を聞いただけで震え上がらせる事のできるボンゴレ」を理想に掲げ、力に固執する傾向があったデイモンの歯止めになっていたのが、エレナの存在だった。
そのエレナを失って、デイモンは暴走を始めたのだ。
ジョットや他の守護者との仲は決裂し、けれども守護者を辞めるわけでもない。
逆にその立場を利用し、水面下で荒くれ者達を集めて派閥を作り始めた。
その不穏な動きを察知しながらも、黙認するジョットを守護者達は責める。

「なぜあの男をいつまでもボンゴレに置いておくのか」、と。
エレナを失った事は不幸な事故。
ジョットを恨むのはデイモンの逆恨み以外のなにものでもない。
危険分子となったデイモンをボンゴレから排除するべきだ、と――。
超直感を持っているジョットでなくとも分かる、あからさまな謀反の予感。
それほどまでにデイモンの力への執着は凄まじかっのだ。

ジョットはデイモンに思い出してほしかった。
貧しい者に食べ物や薬を分け与え、孤児達に読み書きを教え、本を読み聞かせる。
そんな風に力などではなく優しさで弱き者を包み込み、慕われていたエレナの目指したボンゴレを。
だから危険と分かっていても守護者のままでいさせた。
いつの日かエレナの前で誓った友情を信じたかったから。
――けれど。

デイモンの狂気は日を追うごとに増していって――その狂気の炎の火の粉がシモンファミリーに降りかかってしまった。
ジョットを苦しめるだけ苦しめてやろうというつもりなのか、デイモンはジョットの親友であるコザァートに目を付け、彼と彼のファミリー共々抹殺しようとしたのだ。
幸いにもデイモンの企みに気付く事ができて、彼らを救う事はできたけれど。
シモンファミリーはイタリアを離れ、ひっそりと人知れず暮らさなければならない日陰の身となってしまった。

「仲間とのんびり気ままに暮らせればそれでいいんだ」

コザァートはそう言って笑ってくれたけれど、ジョットは後ろめたさでいっぱいで。
「じゃあ、またいつか」と旅立っていくコザァートの後ろ姿を切ない思いで見送った。
だって「またいつか」と言ったけど、きっともう2度と会えない大切な親友。
心にポカリと大きな穴が開いたような喪失感。
デイモンの狙いは多少外れたものの、ジョットに大きなダメージを与える事になった。

おまけに今のボンゴレがバラバラな状態である事は明白で、幹部や友好ファミリーのボス達からジョットの統率力を疑う声が上がり始めて。
『引退』という言葉が囁かれているのも知っている。
ジョットは今、窮地に立たされていた。


「・・・眠れないの?」

「え?あ、起きてたのか・・・」

とっくに寝てしまっただろうと思っていたのだけれど、アラウディはまだ起きていた。

「眠れないなら1回抜いてあげようか」

からかい口調で言われて、カッと頬が熱くなる。

「ど、どどどどうしてお前はそういう・・・!」

真っ赤になりながらアラウディの胸をポカポカと叩けば、クスクスと聞こえる笑い声。

(ま、またからかわれた・・・)

アラウディは、こういった話に弱いジョットをからかうのが楽しいらしい。
ジョットも怒ったふりして枕に顔を埋めたけど、久し振りに気分が明るくなった。
最近ではGとですらギクシャクとしてしまう中で、アラウディだけはその態度を変える事がない。
以前と同じようにふらりと現れては、他愛のないおしゃべりをしたり、ひとつ布団で抱き締め合って眠る。
ジョットの心が安らぐ唯一の時間。
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