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□DNA
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だけど。

(俺が引退したら・・・やっぱり離れていってしまうんだろうな・・・)

ボンゴレT世ではなくなって、ただの『ジョット』に戻ったら。
アラウディはきっともう自分には用なんて無いだろう。
そうしたら2度と会えないかもしれない。
そう思ったらジョットの胸はキュウッと切ない痛みに締め付けられる。
コザァートと別れた時とはまた違う切なさで。
思わずアラウディの顔を見上げれば、感情の読めない青い瞳と目が合った。
その瞳を見たらますます胸が苦しくなる。

「ア、アラウディ・・・」

呼びながらアラウディのシャツをクイクイと引っ張って、チラチラと上目使いに見上げれば。
キスをねだる仕草にアラウディは驚いたように目を見開いた。
アラウディとこういう関係になってから既に1年以上。
その間、ジョットからキスや行為をねだるなんて1度も無かった事。
いつだって意地張って、突っ張って。
素直じゃない態度を取ってきたのだから、アラウディが驚くのも無理はない。
でも。
キスをねだられて嬉しくないわけもなく。
1度は見開いた目を嬉しげに細めて、アラウディはジョットの唇にそっと自分の唇を重ねた。

(アラウディ・・・・)

優しく啄ばむだけのキスだけど、その温もりがたまらなく嬉しくて。
ジョットは初めて―――アラウディを好きなのだと認めた。
けれども気持ちを伝えるなんて出来ず、またアラウディの気持ちを聞く事も出来ずに。
心の中の暗い霧は晴れないまま、アラウディの腕の中で朝を待つのだった――。



執務室の窓から外を見れば、朝から降っていた霧雨が未だに降り続いている。
今日は1日こんな調子か、と思うとますます気持ちが沈む。

アラウディを好きだと認めたあの日から、2週間。
あの日、朝を迎えるとアラウディはまた何処かに行ってしまった。

『アイツとフェデリーゴが何か企んでる。気を付けるんだね』

そう言い残して。
フェデリーゴ。その名前に思わずジョットの眉間に皺が寄る。
フェデリーゴはボンゴレファミリーの中でもかなりの実力者。
ジョット同様、炎を纏う事の出来る稀有な存在。
武器に頼らず、素手と『憤怒の炎』のみで戦う。
荒い気性ながら、どこか人を従わせるカリスマ性の持ち主だ。
穏健派のジョットとは対照的に、武力行使がモットーの過激派。
そんな彼と、彼を慕う者達がデイモンの派閥の中心メンバーなのである。
彼らが何か動きを見せている。
だから注意しろ、とアラウディは言うのだ。

彼らの目的がなんなのか。
ジョットには大体の予想はついている。
デイモンはジョットをボスの座から引きずり降ろして、フェデリーゴをボスにしたいのだ。
フェデリーゴは野心家で好戦的。
デイモンの理想にもっとも近い場所にいる男と言える。
ボスの座を狙うのは構わない。
ただ――どんな方法を使ってくるのかが心配だった。
直接ジョットを狙ってくるのか、それとも周りの人間を狙うのか――。
それが分からなくて落ち着かない。


「おい、ジョット!聞いてるのか、ジョット!」

自分を呼ぶ声にハッと顔を上げれば、Gが不審げな顔でこちらを見ていた。

「ああ・・・すまない。なんだ?」

「さっさとその書類に目を通せ」

呆れたように言われて、今は執務中であった事を思い出す。
慌てて手にしていた書類を読もうとしたその時。

「ジョット!大変だ!!」

執務室のドアを壊れるんじゃないかと思う程の勢いで開けた人物。

「どうしたんだ、ナックル」

普段から陽気で元気なナックルだけど。
今日の騒々しさはただ事ではない。

「今、フィレンツェ市内から連絡があって・・・ボンゴレ配下のホテルで爆発があったと」

「爆発!?事故か、それとも・・・」

「わからん・・・。それで、その爆発にアラウディが巻き込まれたと」

「え・・・?」

「生死の程も分からない・・・」

「とにかくすぐに現場へ!おい、ジョット!しっかりしろ!」

Gにガクガクと肩を揺さぶられるけど。
ナックルが何か叫んでいるけれど。
ジョットにはどこか遠くの世界で起こっている事のようで、まるで現実味がない。
シトシトと降り続く雨の音だけがやけに大きく耳に響いていた――。
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