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□君に嘘
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運命だとか宿命だとか。
一体誰が決めたんだ。





「どうしたのさ」

向かいに座る綱吉がモジモジとしている事に気付いた雲雀は、不審者を見るかのような目で問う。

「トイレなら早く行きなよ」

「ちっ、違います!えっと、その・・・」

なおもウジウジして言い淀む綱吉に、雲雀はトンファーを出した。

「ひぃっ!すみません!えっと、隣に座ってもいいですかっ!?」

慌てた綱吉の口から出た言葉に雲雀は多少面食らったけれど。
恋人の可愛いおねだりを無下にする理由も無くて。
無言で少しだけ横にずれた。
それを見た綱吉の顔がパァッと綻び、いそいそと席を移動して雲雀の隣にちょこんと腰かける。

「変な子」

照れ隠し半分に雲雀が言うけど、綱吉は全く気にしていない様子でパウンドケーキを頬張った。


いつもの並中の応接室で雲雀の仕事を手伝って。
それが終わったら2人でまったりティータイム。
紅茶と、今日のおやつは栗たっぷりのパウンドケーキ。
洋酒の効いたパウンドケーキの甘さと、すぐ側に感じる雲雀の体温に、綱吉は思わずニヤけてしまう。
2人が付き合いだしてから、すっかり当たり前になっていた光景だけど。
その当たり前がたまらなく嬉しいのだ。
だってついこの間まで、2人はこんな穏やかな時間を過ごせるような余裕は無かったから。


白蘭を倒して平和な世界を取り戻す。


それは10年後の綱吉が、綱吉に託した願い。
数々の死闘と悲しみを乗り越えて、ついに白蘭を倒したのはついこの間の事だ。
こちらで過ぎた時間はたいした時間では無かったけれど、向こうの世界で過ごした時間は短いとは言い難い。
おまけに10年後の雲雀は綱吉を鍛え、正一の元に導く為にギリギリまで入れ替わる事が出来なかったし、入れ替わってからも箱兵器の特訓やらチョイスやらでゆっくり過ごす時間なんて無かった。
だから無事に元の世界に戻って、こうして雲雀との時間を過ごせる事がどうしようもなく嬉しいのだ。
横目でチラリと雲雀を見れば、いつもと変わらず涼しい顔。
ヒバリさんは嬉しくないのかな、なんて一瞬ガッカリしたけれど、こういう人だからとすぐに思い直した。

しかし、こうしてまったりとした時間を過ごしてはいるものの、実際には綱吉の心中は穏やかではない。

やっと未来から帰ってこれたと思ったら、落ち着く間も無く正式にボンゴレ十代目になる為の継承式を行う事になってしまった。
継承式までの間にボンゴレを継ぐか決めろ、と。
正直ボスになんてなりたくない。
ボンゴレに関わったせいで、様々な争いに巻き込まれてきた。
特に白蘭の件。
10年後の世界に行って、守護者の面々には血を吐くような修行と闘いの日々を送らせる事になった。
関係の無い京子やハルまで巻き込んで、悲しい思いまでさせた事を綱吉は今でも気に病んでいる。
どれもこれもボンゴレに関わらなければ。
もう皆を危ない目に合わせたくなかったし、何より自分はボスになれるような器では無いと綱吉は思う。
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