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□DNA
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外から聞こえてくる小鳥の囀り。
閉じた瞼を柔らかく刺激する陽の光。
どこからか香ってくるモーニングティーの香り。
それらの全てが朝が来た事を教えてくれるけれど。

「んむぅ〜・・・・」

ジョットはシーツを頭まですっぽり被って、起きる事を拒否した。
幼馴染みであり自分の右腕でもあるGが「いい加減に起きろ!」と怒鳴りこんでくるまでは、ぬくぬくと夢の続きを見ていたい。
至福の二度寝を、とふかふかの羽根枕を抱き寄せた―――つもりだったのに。

「んー?」

ふかふかどころかカチカチ。
しかも枕にしては長細い。
こんな抱き枕持ってたっけ?と、うっすらと目を開けてみれば。

「え・・・え?」

ジョットがしがみ付いていた物。
それは枕などではなく人間の腕。
その肌は陶器のように白く滑らかだけれど、女の柔らかいそれではない。
よく鍛えられた筋肉に包まれた男の腕。
ジョットはゴクリと唾を飲み込むと、恐る恐る目線を上げてみる。

「またか・・・」

見上げた先には予想通りの顔があって、ジョットは頭を抱えながら大きくタメ息を吐く。
ジョットのベッドに潜り込んでいた人物。
それは雲の守護者にしてボンゴレの門外顧問、アラウディだった。
ジョットはクシャリを髪を掻いて、そしてハッと気付く。
慌てて自分の身体を確認してみれば、きちんとシルクの寝間着の上下を着ている。
その事にホッと安堵の息を吐いて、もう1度アラウディの顔を覗き込んだ。

サラサラとした真っ直ぐな髪は、満月の光のような艶やかな銀色。
今は閉じられている瞼の下には、透き通った湖のような青の瞳。
光の加減で時に紫に、時に銀色がかっているように見える不思議な色の瞳だ。
そして冷たい印象を与える薄く形のいい唇。
顔立ちは高貴で人形のように美しい。

「黙ってれば格好いいんだがな・・・」

その王子様めいた見た目とはうらはらに性格は極悪。
ある国家の諜報部員として暗躍する彼は、血も涙も無い極悪人として裏の世界では恐れられている。
ジョットも今までに彼によって瀕死の目に合わされた人間を何人も見てきた。
殺さないけれど、死ぬ一歩手前ぐらいの目にはあわせる。
それがアラウディのやり方。

誰も信用せず、いつも1人でフラフラと。
正しく雲のような生き方をしている男。
そんなアラウディをジョットがボンゴレに引き入れたのは一年程前。
Gは猛反対したけれど、アラウディのような存在がボンゴレには必要だと思ったのだ。

「・・・・見惚れてるの?」

ボンヤリとアラウディの顔を見ながら昔を思い出していると。
突然アラウディの目がパチリと開いた。

「ち、ちがっ・・・・!何バカな事言ってるんだ!」

ジョットは赤くなりながらシーツの海に隠れる。

「僕の事格好いいって言ってたじゃない」

そんなジョットの上にノシリと圧し掛かりながら、アラウディは尚もジョットを追い詰めた。

「う、うるさいっ!大体なんでお前オレのベットに!」

この城にはお前の部屋だってあるのに、とジョットは叫んだ。
麗しの都フィレンツェから少し離れた郊外にある森の中。
静かな森の中央には美しい湖があって――その畔には重厚な城が佇んでいる。
それがボンゴレ城だ。
主は勿論、ボンゴレT世であるジョット。
最上階の湖を見下ろす豪奢なこの部屋がジョットの部屋。
ボンゴレファミリーの幹部である守護者達の部屋も当然あって。
群れる事を嫌うアラウディの部屋もちゃんと用意されているのだ。

「自分の部屋で寝ればいいのに!」

アラウディはそう叫ぶジョットの耳元の髪を楽しげに梳きながら。

「自分のオンナのベッドで寝て何が悪いの・・・?」
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