otherA

□1/365
1ページ/1ページ

今日は何の日?


ポカポカと陽の当たる縁側で、ロールはケプリとひとつゲップした。

「満足したかい」

『クピィ!』

主である雲雀に問われて返事をすれば、鼻の頭をクシクシと撫でられて。
その心地よさにロールはウットリとした表情を浮かべる。
お昼ごはんを食べて、更に敬愛する主にマッサージまでしてもらって、正に至福のひと時――だったのだが。
グイッ、と無理矢理ロールと雲雀の指の間に入って来た黄色い物体。
一体なんだ、と見てみれば。

『ピッ!』

雲雀家の先住ペットであるヒバードだった。
ジロリとひと睨みされてロールは竦み上がってしまう。

『ヒバード サシオイテ ナニシテル!』

口に出さずとも目がそう言っていた。

『キュウゥ・・・・』

完全に迫力負けしたロールは、すごすごと退散しようとしたのだけれど。

「こっちにおいで」

そう言って雲雀は、ヒバードを撫でる手とは逆の手で撫でてくれた。

『クピ〜・・・』

そうして二匹揃って雲雀に甘えていると。

「委員長、贈り物が届いております」

草壁がリボンのかかった箱をふたつ持ってやって来た。

「今年も来たの・・・。マメだよね、あの人達」

受け取った箱を雑な感じに開ける。

「おお!新しいスーツですね」

中には見るからに仕立ての良いブラックスーツ。
けれども雲雀は浮かない顔。

「どうせこれ着てパーティに出ろとか言うんでしょ」

そうだろうな、と草壁は苦笑いする。
プレゼントの送り主は雲雀の両親。
ふたりは末っ子の雲雀が可愛くてしょうがないのだけれど。
雲雀は束縛されるのを嫌い、親の元を離れて並盛に住んでいる。
小さい時からなにかと連れ回されては、見せ物のように人に自慢されて。
我慢の限界だったのだ。
けれどもどうしても息子自慢したいらしい両親は、どうにかこうにか雲雀を引っ張り出そうとする。

「絶対行かない・・・・」

完全にヘソを曲げた様子で、グイッと箱を遠くへ押しやる。

「もうひとつは・・・・なにこれ!?」

もうひとつの箱を開けた雲雀が素っ頓狂な声を上げるから。
草壁も興味津々で覗き込んで――そして吹き出した。
中に入っていたのはクラシックなデザインの紺色のセーラー服だったのだ。

「あ、委員長。手紙が・・・」

セーラー服の上にポンと乗っていた封筒を草壁が手にすれば、雲雀が「読め」というように頷く。

「では失礼して・・・『恭弥、誕生日おめでとう。これは僕からのプレゼントだよ。これをツナ君に着せて楽しむといい 壱弥』・・・・」

あまりの内容に草壁は途中から声が震えてしまった。

「あの人本当に馬鹿なんじゃないの!」

声を荒げて実の兄・壱弥を罵るけれど。
セーラー服の入った箱はちゃんとフタをして、自分の横に置いた雲雀を、草壁は見ないふりしたのだった・・・。


「お待たせしました〜」

その時、綱吉がひょこりと顔を出して。
雲雀と草壁はわたわたと慌ててしまった。

「どうしました?」

キョトンとした顔の綱吉に、何でもないと首を振る。

「そうですか?あ、冷めないうちに食べて下さい!」

そう言って綱吉は、テーブルの上にコトリと皿を置く。
ホワホワと湯気を立てるデミグラスソースたっぷりのハンバーグが乗っていた。

「いただくよ」

縁側から部屋に移動して、雲雀は早速一口パクリと食べた。

「どうです・・・?」

不安げな表情でそれを見ていた綱吉の問いかけに、雲雀は満足そうに。

「美味しいよ」

「よかったぁ〜」

綱吉はその答えに、ホッとしたように息を吐いた。
今日は綱吉にとって大事な日。
大好きな雲雀の誕生日。
だから、朝からばあやに手伝って貰って、一生懸命雲雀の好物であるハンバーグを作ったのだ。

「ヒバードとロールにもあるんだよ」

そう言って綱吉は薄味に仕上げた鶏肉のハンバーグを二匹の前に置く。

『オイシイ!オイシイ!』

と、ガツガツとハンバーグをつつくヒバードに倣って、ロールもカプリと齧り付く。
ロールの餌は基本的にハリネズミ専用のドライフード。
たまに果物とか野菜とか魚肉ソーセージを貰うのだけど。
初めて食べた鶏肉の味に、ロールのテンションは一気に上った。

『クピィ!』

さっきお昼ごはんを食べたばかりだというのに、夢中になって食べてしまった。
再びケプリとゲップして雲雀を見れば。
嬉しそうにハンバーグを食べている。
滅多に見れないご機嫌な表情だ。


ロールにとって鶏肉記念日となった今日は。
雲雀にとっても幸せな日だったようだった――。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ