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□雨色
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シトシト ジメジメ


「鬱陶しいぞ!このクソ牛!」

「ギャピッ!オレっちのせいじゃないんだもんね!」

わああぁん!と、リボーンにガツリと殴られたランボが大泣きし始めて。
綱吉はまたか、と軽くタメ息を吐きながら2人に歩み寄った。

「八つ当たりするなよ、リボーン!ランボも落ち着けって」

わんわんと泣くランボをヒョイと持ち上げて宥めてやる。

「ふんっ。モジャモジャしやがって目障りだ」

リボーンは吐き捨てるように言うと、さっさと2階に上がってしまった。
やれやれ、とタメ息を吐きながら綱吉は窓の外を見遣る。
外はシトシトと纏わり付くような雨。
梅雨入りしてからというもの、連日こんな陽気。
もう何日も太陽を拝んでいない。リボーンでなくともイライラするような鬱陶しい陽気だ。

ランボは髪が湿気を含んでまるで大きな毛玉のよう。
そんな状態でチョロチョロと家の中を駆けずり回るから、リボーンにキレられたのだ。
ランボだって本当なら外で遊びたいのだろうけれど、なにせ外は雨。
イーピンと一緒に家の中で遊ぶしかない。
ビアンキも湿気で髪型が決まらないとぼやいていたし、奈々も洗濯物が乾かなくて困っていた。

「おとなしくトランプでもして遊んでろよ。じゃあ、いってきまーす」

まだぐずっているランボを奈々に託して、綱吉は学校へと向かった。



「十代目っ!」

「ツナー!」

ポテポテと歩いていると背後から声をかけられて。
振り返れば獄寺と山本が走ってきた。

「獄寺君、山本、おはよう」

「おはようございます!」

「おっす!今日も雨なのなー」

山本がうんざりといった様子で言う。
野球部の練習が何日もできなくて、ランボ同様鬱憤が溜まっているようだった。

「俺もダイナマイトが湿気でやられちまって…」

獄寺もまた空を恨めしそうに見上げた。
けれど。

「雨だって悪い事ばかりじゃないんだけどな…」

綱吉はポツリと呟く。

「え?何か言ったか?」

山本と獄寺に不思議そうな顔で覗き込まれて。

「ううん。何でもないよ」

早く学校に行こう、と綱吉はわたわたと急ぎ足で学校へと急いだ。

学校に着いて教室に向かう途中。晴れていようと雨だろうと変わらない漆黒の影が廊下の向こうからやって来た。

「げっ。雲雀…」

獄寺が露骨に嫌そうな顔をして、雲雀に喧嘩を売ろうとしたけれど。
山本に腕を引かれて、教室へと引きずられて行った。

「ヒバリさん、おはようございます」

山本に感謝しつつ、綱吉はニッコリと雲雀に挨拶する。

「おはよう、綱吉」

雲雀もまた(綱吉にしかわからない上機嫌な顔で)応えた。

「ヒバリさん、今日は放課後応接室に行ってもいいですか?」

「うん。でも今日は僕の家に行こう」

「え?お仕事は?」

「最近は隣町とのゴタゴタも少ないし、何枚かの書類に目を通すだけだから」

だから家でも出来る、と。

「ばあやがこの頃和菓子作りにハマっててね。美味しい水まんじゅうをご馳走するよ」

「水まんじゅう!」

甘い物好きの綱吉はコクコクと頷いた。
じゃあまた放課後に、と去っていく雲雀の後ろ姿を見送る。
雲雀の仕事が最近少ない理由。
それはこの雨のせい。
わざわざこの雨の中、隣町の不良達は並盛まで遠征してこないし、並中の生徒達も寄り道せず真っ直ぐ家に帰るのだ。
雲雀はつまらないとぼやくけれど。
綱吉にとっては雲雀と一緒にいられる時間が増えて嬉しい限り。

「ほら、やっぱり雨も悪くない」

綱吉は鼻歌を歌いながら―――教室へと向かった。

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