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□ぷよぷよ
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「最近どんなスイーツが流行ってるのかな」


主からの意外すぎる質問に、草壁は一瞬固まった。
だって草壁の主である雲雀は三度の飯より喧嘩が好きという荒くれ者。
そんな雲雀の口からスイーツなんてファンシーな単語が飛び出したものだから驚いてしまったのだ。
けれどもすぐに恋人とのお茶会用茶菓子の事かと1人納得する。
雲雀の恋人である綱吉は甘い物が大好きだから。
そんな綱吉に喜んでもらえるスイーツを用意したいのだろう。
だから草壁は綱吉のおやつ探しの為に、こっそりと読んだ女性向けの雑誌の内容を思い出す。

「ええと・・・流行かどうかは分かりませんが、ラ・メゾン・デュ・ショコラのエクレアが美味しいと評判です。
最近はドーナツも色々種類がありますよ。ナミモリーヌの新作『レモンのロールケーキ』も好評のようです」

昭和のバンカラといった風情の草壁から、スラスラとスイーツ情報が出てきた事に雲雀は一瞬驚いたようだったけれど。

「そう・・・よく調べてくれてるね」

雲雀に誉められて、草壁のテンションは一気に上がる。
姉の雑誌をこっそり読んでいるのを妹に見つかり、姉妹に揃って「強面スイーツ男子」などとからかわれた屈辱など帳消しになるくらいだった。

「ありがとうございますっ!で、どちらを買ってきましょうか」

意気込んで言った所でふと気付く。
そういえば最近綱吉が応接室に来ていない。
2人が付き合うようになってから放課後のお茶会はほぼ日課になっていたというのに。

「最近沢田さん来ませんね・・・はっ!」

思わずポツリと呟いて、急に室内の温度が下がった事にハッとなる。
恐る恐る雲雀を見れば、鬼の形相で草壁を睨み付けていた。
喧嘩をしたのかなんなのか。
どうやら綱吉のご機嫌取りの為のスイーツだったらしい。
冷や汗が背中を流れたその時。

「失礼しますっ!委員長、沢田さんが体育の授業中に倒れて保健室に・・・!」

応接室に飛び込んできた風紀委員の言葉に、雲雀と草壁は応接室を飛び出した。
真っ直ぐ向かった保健室のドアをノックも無しに開ける。

「なんだ、忠犬が帰ったと思ったら今度は委員長様か」

面倒くさそうに呟くシャマルを押しのけて、雲雀は綱吉のベッドに駆け寄った。
ベッドに横たわる綱吉の顔はあまりにも青白くて。

「まさか何かの病気・・・」

「違う違う。ただの貧血。栄養失調だよ」

「栄養失調!?」

雲雀と草壁はそろって驚きの声を上げた。

「最近飯を控えてたらしい。要するにダイエットだ」

まさかのダイエットという単語に草壁は呆気にとられる。
だって綱吉は女の子と見間違うくらい華奢でか細くて。
ダイエットの必要なんてまったく無い。むしろもっと食べた方がいいくらいだ。

「どうせ原因はお前だろ。ちゃんと食わせろよ」

シャマルは雲雀の背中をバシリと叩いて保健室を出て行った。
シン・・・となった保健室の中、草壁が居心地の悪い思いをしていると。

「ん・・・」

「綱吉っ!」

綱吉が目を覚まして、パチパチと瞬きを繰り返す。

「えっと、オレ・・・?」

「体育の途中で倒れたんだよ。どうしてダイエットなんてしてるの・・・?」

雲雀がいつもより白い綱吉の頬を撫でながら聞けば、綱吉は顔を曇らせて横を向いてしまう。

「最近お茶も飲みに来てくれなかったよね。喧嘩したわけでもないのにどうして?」

僕の事が嫌いになった?と寂しげに呟けば。

「嫌いになんて・・・!だってヒバリさんが・・・」

「僕が何?」

綱吉は言いにくそうに俯くとポツポツと話し始めた。

「ヒバリさん、この間オレのお腹がぷよぷよだって・・・」

そう言ってお腹の肉をつまんだじゃないですか、と。
それがショックだったと綱吉はますます俯く。

「なんだ。そんな事・・・・」

雲雀はホッと安堵の息を漏らす。
別に綱吉のお腹を馬鹿にしたわけではない。
むしろふにふにと柔らかくてお餅みたいにスベスベな綱吉のお腹は、雲雀のお気に入りだ。
悪気無くからかっただけだったのだが、綱吉は傷付いたらしい。

「ごめんね。綱吉は今のままでいいんだよ」

「ホントですか・・・?」

「うん。このぷにぷにの頬もお腹も僕のお気に入りなんだから」

ダイエットなんて止めてよね、と雲雀が言えば。
綱吉は嬉しそうに頷いた。

そんな2人を見て、草壁はそっと保健室を後にする。
そうしてお茶会用のスイーツを買いに出掛けたのだった――。

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