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□spy
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「虫ってカロリーが高いのかな」


雲雀がボソリと呟いた言葉の意味が分からなくて、綱吉は目をパチクリと瞬かせた。

「え?どういう事ですか?」

「虫は高カロリーな食べ物なのかって言ってるんだよ」

椅子にふんぞり返りながら座る雲雀を見て、綱吉は口をへの字に曲げる。

(たまにおかしな事言い出すんだよね・・・)

ゲテモノ食いの趣味でもあるんだろうか、と思いながらその真意を探る事にしてみた。

「虫ってどういう・・・」

「青虫とかミミズとか。あとは今の時期だと蝉とかかな」

蝉は食べごたえがありそう、なんて一瞬考えちゃってオエッてなる。

「ヒ、ヒバリさん・・・虫食べるんですか・・・?」

オレはミミズやら蝉やらを食べている口とキスしていたのか、と青くなる綱吉をギロリとひと睨み。

「なんで僕が虫を食べるのさ。この子の話だよ」

そう言って雲雀が指差したのは黄色い小鳥。

「ああ、ヒバードの話ですか」

100均で買ってきた籠に綿と布を詰めた綱吉お手製ベッドで、くぅくぅと眠るヒバードを見て胸を撫で下ろす。

「最近この子太ったと思わない?」

「そう言えば・・・・」

前からちょっと丸っこかったけど、今やテニスボールと見間違える程丸い。
飛ぶ姿もどこか重たげでヘロヘロだったと思う。

「食事は僕がキチンと管理してる。ばあやも草壁もエサはやってないって言ってるんだ。君はねだられた事あるかい?」

「ありますけど・・・。でも、そんなにしょっちゅうじゃないし、量だってあげてませんよ」

「そうだよね。なのにコロコロ太ってきたから外で虫でも食べてるのかと思って」

鳥は虫を食べるよね、と。

「うう・・・ちょっと想像したくないです」

ヒバードがガツガツと蝉を突いている絵を想像して、綱吉は思わず口を押えた。

「虫を食べたからってこんなに激太りするとは思えないんですけど・・・」

「じゃあどうしてだろう・・・」

ヒバード激太りの謎に首を傾げる2人だった。


次の日、綱吉は雲雀に会う為に応接室に行く途中で、校舎裏へと飛んでいくヒバードを発見した。
謎が解けるかも!と、慌てて後を追う。
そうして辿り着いたのは園芸用具がしまわれている小さな倉庫の影。
そこには2人の女生徒がヒバードを待っていた。

(あ、あの人は確か・・・・)

綱吉はそのうちの1人に見覚えがあった。
並中内で密かに結成されている『雲雀ファンクラブ』のリーダーだ。
熱烈な雲雀ファンとしてちょっとした有名人である。
綱吉は花壇の影からこっそりと彼女達の様子を窺った。

「こんにちは、ヒバードちゃん」

彼女が慣れた手つきで手を差し伸べれば、ヒバードがその手にちょこんと降り立った。

「今日は何を教えてくれるの?」

『ヒバリ スキナ タベモノ!』

「雲雀さんの好物!?いいネタだわ!」

(え?え?もしかしてヒバード・・・ヒバリさんの情報を流してるの〜?)

確かに雲雀は謎が多い。
でもそんな彼の情報を、身近にいる小鳥から聞き出そうとするとは!
彼女達の執念にいささか呆れ気味の綱吉だった。

『ヒバリ ハンバーグ スキ!』

ヒバードもノリノリで教えてしまっている。

「雲雀さんたらハンバーグが好きだなんて可愛い〜!」

「早速ファンクラブの会報に載せよう!あ、ヒバードちゃん。これ、今日のお礼よ」

彼女達はキャッキャしながらヒバードの前にたくさんのお菓子を置いた。
バームクーヘンにお煎餅にアーモンドたっぷりのクッキー。

「じゃあまたよろしくね」

彼女達が去っていくと、ヒバードはガツガツとお菓子を食べ始めた。

『ヒバード オイシイ!ヒバード シアワセ!』

それを見て綱吉は深い深いタメ息を吐く。
これがヒバード激太りの原因だったのだ。
雲雀の情報を流して、謝礼としてお菓子を貰う。
見事なギブアンドテイクだ。

(と、鳥なのにスゲー!でも・・・ヒバリさんにバレたらマズイんじゃ)

そう思ったその時。
上機嫌で菓子を突くヒバードの背後に迫る黒い影。

(でっ、出たー!!)

ヒバードの主がゆっくりと近付いてくる。

(ヒバードうしろ、うしろー!)

心の中で叫ぶ綱吉だった。


その後、ファンクラブは強制解散。
ヒバードには2ヶ月のおやつ禁止令が下されたのだった。

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