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□炬燵deみかん
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「あーっ!酷いですっ。ヒバリさん!」

突如響いた綱吉の悲鳴じみた叫びに草壁は縁側から床の間を振り返る。
見れば雲雀が綱吉の手からみかんを奪った所。
その子供じみた行為に草壁は「またか」と小さくタメ息を吐いた。


木枯らしが吹いていよいよ冬将軍の到来。
日に日に寒さを増す今日この頃。
先日雲雀家では早々に炬燵を出した。
そして今日遊びに来た綱吉はそれを見るなり潜り込んで。
ぬくぬくと暖を取っていた。
そうして雲雀と今日の分の勉強をしていたはずなのに。

休憩の時間に綱吉がみかんに手を伸ばした。
炬燵とみかんは実に相性がいい。籠に入ったみかんは、静岡のみかん農園から取り寄せている最高に甘くて瑞々しいみかんだ。
綱吉は几帳面なのかそれとも何かこだわりがあるのか。
草壁がじれったく思う程、丁寧に丁寧に白い筋を取っていく。

そうして時間をかけて納得いくまで筋を取ったみかん。
いざ食べよう、という瞬間にそのみかんを雲雀に奪われたのだ。

「返して下さいーっ!」

「ヤダ」

草壁の主は子供っぽい。
正しそれは恋愛――というよりは綱吉が係わる事に関してだが。
とにかく愛情表現が小学生並。
むしろ最近の小学生の方がもっと上手なんじゃないかと思ってしまう。
今もこうしてみかんを取り上げて、綱吉がキャンキャンと怒るのを楽しんでいるのだ。
また大人気の無い事をして、と草壁はハラハラしてしまう。
ケンカにならなければいいのだけれど、と様子を見ていると。

「返せ」と騒ぐ綱吉を無視して雲雀はみかんを半分に割って、片方をバクリと一気に口の中に入れた。

「あーーっ!!」

それを見た綱吉が悲観的な声を上げる。

「そんな食べ方邪道です!みかんは一房ずつ食べないとダメですよっ。
第一それはオレが剥いたみかん・・・・むぐっ」

ブーブーと文句をたれる唇にムギュッと押し当てられる一房のみかん。
雲雀が無言のまま差し出したそれを、上目使いで睨みながらもパクリと食べる。

「ゴクンッ。だいたいヒバリさんはわがままなんですよ!
どこの国の王様で・・・・・パクッ」

みかんを飲み込んで、再び文句を言い始めた唇にまた押し付けられるみかん。
綱吉は律儀にそれを口に入れるとモグモグと咀嚼する。

「ゴクッ。人の物を横取りするなんて人として・・・パクッ」

まるで水飲み人形のように繰り返される行為。


ああ、なんだ。
いつものじゃれ合いか。


これなら放っておいても大丈夫。
そう思った草壁は2人に背を向けて、再び縁側から空を見上げる。
ピィと鳴きながらヒバードが飛んでいく。

「今日も平和だ・・・」

草壁の呟きは真っ青な冬空に吸い込まれていった。

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