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□初詣
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「ヒバリさん、何を神様にお願いするんですか?」

綱吉は人ごみの中、必死に雲雀のコートの裾を掴みながら聞いた。

「そういうのって人に言っちゃいけないんじゃないの?」

雲雀が人ごみに辟易したという表情で答える。
その表情を見て、綱吉は雲雀が帰ると言い出さないかドキドキしていた。

1月4日。
三箇日も過ぎて、参拝する人も減っただろうと、綱吉は雲雀を初詣に誘ってみた。
群れ嫌いの雲雀が頷いてくれるか不安だったけれど、雲雀はあっさりと「いいよ」と言ってくれて。
そうして仲良くやって来たのは並盛神社――ではなく、並盛から電車で5駅の所。
雲雀には内緒にしているけれど、恋愛の神様が祀られている神社。
京子と花が「凄く御利益があるらしいよ」と話していたのを聞いて、どうしても雲雀と来たかったのだ。

参拝客も減っただろうという綱吉の思惑は、外れでも当りでもなく。
参道は若い女の子達で埋め尽くされていた。
それでも三箇日はもっと人が多かったという。
周りの女の子達の話が耳に入ってきて、「恋愛の神様巡りはこれで五つ目」と言っている子までいた。

「あ」

そんな女の子パワーに押されて綱吉がよろりとよろける。
雲雀が何気なく綱吉の手を掴んで――自分のコートのポケットに綱吉の手ごと手を突っ込んだ。

「ひ、ヒバリさ・・・!」

ポケットの中でギュウと手を握られて、あわあわと動揺する。

「誰も気にしてないよ」

そうかもしれないですけどぉ、とブツブツ言いながらも手を引っ込める事はしなかった。
そうしてやっと辿り着いた賽銭箱。
綱吉は財布からピカピカに磨いた5円玉を出すと賽銭箱に投げ入れて。
柏手を打って願い事をする。

(今年もヒバリさんとラブラブできますように・・・)

この神社を選んだ以上、どうしたってこの願い事が最優先。
ついでのように「今年はマフィアの抗争に巻き込まれませんように」とだけ祈って脇に避ける。

「随分熱心に祈ってたね」

「だって大事なお願いだったんですもん・・・」

ふうん、と意味ありげに笑う雲雀の手を照れ隠しにグイグイと引っ張って。

「オレ、りんご飴食べたいんです!」

参道にズラリと並んだ屋台。
食いしん坊な綱吉の初詣の楽しみだったりする。

「え、なにこれ。りんご丸々1個なの?」

りんご飴を初めて見たらしい雲雀は、その大きさにギョッとした様子。

「そうですよ。甘くて美味しいんです。ヒバリさんも食べますか?」

「いや、僕は・・・。あ、苺もあるんだね。そっちにしようかな」

雲雀と二人、りんご飴といちご飴を頬張りながら歩く。
この後は、並盛に帰って雲雀のばあや特製しるこを食べてマッタリして。
夜は鍋を食べて雲雀の部屋にお泊り。
綱吉は早速神様への祈りが通じたようで、ニコニコとりんご飴を舐める。

「・・・御利益あるみたいだね」

突然、雲雀が機嫌よさげに言うから綱吉は驚いた。
だって綱吉が考えていた事と全く同じだったから。

「え?え?」

どうして、と目を瞬かせていると、雲雀が飴でベタベタになった綱吉の唇をペロリと舐める。

「んなぁ!?何してるんですかぁ?」

顔を真っ赤にしてる綱吉の手をギュウと握って。

「今年も可愛い綱吉がたくさん見れますように、ってお願いしたんだ」

早速叶った、とご機嫌な雲雀に綱吉は益々顔に熱が上がる。

「オ、オレ、別に可愛くなんて・・・」

「あそこに並んでる子達の誰よりも可愛いよ?」

ああもう!御利益ありすぎ!
でも、恥ずかし過ぎて素直になれない。

オレは男ですもん。
可愛いって言われても嬉しくないですもん。
今年はきっと身長だってグンと伸びちゃうんですからねっ!

と、口早に悪態を吐いたって。
真っ赤な耳が照れ隠しである事を物語っている。

「それがツンデレってやつかい?」

からかうように言ってみれば。

なんですか、ソレ。
意味分からないです。
オレはツンデレなんかじゃないですからね!

と、りんご飴を持って上目使いでキャンキャンと吠える姿は。
可愛いとしか言いようが無かった。

うん、そうだね。と子供をあやすように言いながら。
今年はこの路線で行こうと思う雲雀だった。

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