後輩×先輩1827

□年下なアイツ
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朝起きてからずっとソワソワしっぱなしで全く落ち着かない。
正確に言えば昨日の夜からろくに眠れないくらい緊張してて、今日は休みだというのに6時に目が覚めてしまった。
今、時計の針は10時少し前を指している。
約束の時間まであと少し。
いよいよだと思うと心臓がバクバクする。

ここは私立並盛学園の男子寮。
並盛学園は全寮制なんだ。
オレ、沢田綱吉(高2)はその男子寮の寮長をしている。
寮長だからといって頼りがいがあるとか、リーダーシップがあるとかではない。
むしろ全く逆。

寮長は毎年2年生が務める事になっていて、何人かの立候補者の中から投票で決められる。
今年は誰も立候補者が出なくて、先生が帰宅部でさらに何の委員会にも属してない奴がやれって言いだして。
見事その条件に当てはまってしまったオレが選ばれた。
要するに面倒くさい仕事を押し付けられただけの、自分でも嫌になるくらいのドン臭い人間だ。


そうして寮長になって早2ヶ月。
やっと仕事にも慣れてきた3日前の事。
放送で寮管の先生に呼ばれてすごく嫌な予感がした。
こういう予感ってたいてい当たる。

「失礼します」

「おー、沢田!さすが寮長、来るの早いな」

いつもは要領が悪いとかトロいとか文句ばっかり言うくせに、あからさまなヨイショをしてくる。

「あのなー、えーっと、ホラ、あれだ」

言いにくそうにまごまごしている様子から、嫌な予感が確信に変わった。

「あー・・・、1年の雲雀って知ってるだろ?」

先生の口から出た名前に大袈裟でなく倒れそうになった。

雲雀恭弥。
今年の新入生だけれど、この学校で彼を知らない者などいない。
スラリと長い手足にバランスのいい体。
色が白く髪はサラサラで艶のある漆黒。
疳の強そうな形のいい眉にスッと通った高すぎない鼻。
桜色の薄い唇はキュッと引き締められて。
印象的な切れ長の瞳は煌めく黒曜石のごとく。

まぁ、要するに彼は恐ろしく整った美形だった。
入学式の日、新入生在校生共に湧き上がった程。
けれども王子様の登場に皆が甘い夢を見れたのは一瞬の事。

彼は見た目に反するとんでもない暴君だった。

彼に話しかける者は男女問わずトンファーで殴られたし、数人で固まっているだけで「群れている」という理不尽すぎる理由で殴られる。
先輩もなにも関係ない。
とにかく群れる事を嫌い、他人を寄せ付けない。
ウチの学校のガラの悪い連中もあっという間に叩きのめして、その支配下に置いてしまった。
彼の家はたいそうな資産家でこの学校に多額の寄付をしているという事もあり、先生すら彼にはひれ伏す始末。

「咬み殺す」が口癖の物騒な王子様が、学校の支配者になったのは入学からわずか3日の事だった――。
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