後輩×先輩1827

□年下なアイツ
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「ヒ、ヒバリ君が・・・何ですか」

大方の予想はついてるけど一応聞いてみる。

「あのなー、寮の部屋なんだけど・・・お前、雲雀と同室になってもらえないか?」

あー、やっぱり。予想はしてたけどかなりショック。
全寮制ということはつまり、彼も例外なく寮に入る事になる。
寮は1、2年生は2人1部屋。3年生だけが1人部屋になっている。
だけど人間嫌いのヒバリ君が誰かと同室なんて無理な話。
1人目の犠牲者は3日で部屋替えとなった。
それから1年生が代わる代わる彼と同室になっては打ちのめされる。
長くて5日、最短で30分なんてのもいた。

だから異例だがヒバリ君は1人部屋でっていう提案がされたんだけど、それでは規則が守られないと言って本人が断った。
なんでそんな所だけ真面目なのか。
そうして先日最後の1年生が犠牲になった所だった。
だから次は2年生に廻ってきたんだ。
ダメもとで最後の抵抗を試みてみる。

「そんなっ!寮長は2年生だけど1人部屋っていうのが特権じゃないですかっ」

オレが嫌々ながらも寮長を引き受けたのはその特権が非常に魅力的だったから。

「んー、分かってるけど。頼むよ、寮長!」

やはり惨敗。オレは深々とタメ息を吐いて了承した―。



休日の今日が引越しの日。
オレは昨日一足先に部屋を移動して荷物を片付け、掃除した。
約束の時間は10時。オレの命もあと少し・・・などと思っていると。
時計の針が10時を指したと同時にドアがノックされる。

「は、はい。どうぞ」

大袈裟な程飛びあがって返事をする。
ガチャリと扉が開き、ヒバリ君が部屋に入って来た。

「りょ、寮長のさわっ、沢田ですっ。きょ、今日から、よ、よろしく」

ギクシャクと立ち上がって目を逸らしながら挨拶する。喉がカラカラだ。

「雲雀です。宜しくお願いします」

思いのほか穏やかで丁寧な物腰に思わず顔を見る。
こんなに近くで彼を見るのは初めてだ。
年下だけど、チビで子供っぽくて未だに中学生と間違えられるオレよりも背が高くて遥かに大人びた美貌。
思わずポカンと見惚れてしまう程に。

「先輩?どうかしましたか?」

呼ばれ慣れない『先輩』という響きに何故だか顔が赤くなる。

「い、いや。えっと、とりあえず荷物整理しようか。オレ、手伝うよ」

あたふたと一気に捲し立てるとヒバリ君がクスリと笑った。

なにそれ!なにその笑顔!
なんか聞いてた印象と全然違うんですけど!

ますます熱くなる顔を隠すように伏せて、ヒバリ君の荷物を解いていく。

「ヒ、ヒバリ君、参考書ここでいい?」

「恭弥」

「えっ?」

返って来た答えになってない答えに思わず問い返す。

「恭弥でいいですよ。―――綱吉先輩」

眩暈がしそうなくらい甘い低音。そして甘い眼差し。

「きょ、恭弥・・・君」

なんだろう。この酒に酔ったみたいな酩酊感。
思わずクラリと傾いた所で、腕を恭弥君の大きな手に掴まれる。

「大丈夫ですか?綱吉先輩・・・」

耳のすぐ側で聞こえる低音にゾクゾクと何かが走って膝から力が抜けそうになって。
崩れ落ちそうになる体をいつの間にか腰に廻された恭弥君の腕が支えてくれていた。
おまけにオレは縋りつくように恭弥君の胸元のシャツを握り締めてた。

何してんの、オレ。
ていうか恭弥君、なんでそんな甘い瞳でオレを見るの?
頭1個分高い所にある恭弥君の顔から目が離せない。
混乱して涙が滲んでしまう。
そんなオレの様子を見て、恭弥君がまた微笑んだ。
そうしてオレの耳にそっと顔を近付けて。

「ここまで来るのに2ヶ月もかかっちゃった・・・」

もう離さないよ?って甘い甘い囁き。
心も体も溶けちゃいそうなくらい。

初対面で何言ってんの?第一オレ、男だし。
クラスメイトの京子ちゃんに憧れる立派な男子なんだよ?

そう思うのになんでこの腕の中から逃げる事ができないんだろう。
心地いいと思ってしまうんだろう。

何が何だか全然よく分からないけど。
昨日までの単調で退屈な高校生活とは違う毎日が始まる。
それだけは確信できたんだ。



星様
リクエスト通りの内容になっているかかなり不安なのですが・・・;
お気に召して頂けますと幸いです。
リクエストありがとうございました!
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